第10話 今日はごちそう
市場で買った肉を焼く音が、家の中へ心地よく響く。
「今日は奮発しちゃった。」
アイリが嬉しそうにフライパンを揺らす。
香ばしい匂いに、グレンのお腹が鳴った。
「いい匂いだな。」
「今日はいっぱい頑張ったもん。」
「そうだな。」
二人で食卓を囲む。
焼きたての肉に、温かいスープ。
黒パンも今日は少しだけ豪華だ。
「いただきます。」
「いただきます。」
一口食べたグレンは思わず笑う。
「うまい。」
「ほんと?」
「ああ。」
「アイリの料理は世界一だ。」
「またそんなこと言って。」
照れながらも、アイリは嬉しそうに笑った。
食事を終え、お茶を飲みながら一息つく。
グレンは机の上の木箱へ視線を向けた。
「……そろそろ。」
「うん。」
アイリも頷く。
「研究の時間だね。」
木箱の中には、今日手に入れたスキルブックが並んでいる。
グレンはその中から二冊を選んだ。
「身体強化。」
「防御強化。」
「この組み合わせ?」
アイリが首を傾げる。
「ああ。」
グレンは頷いた。
「俺はもう両方覚えてる。」
「だから、新しい支援スキルになれば一番いい。」
「私向けかもね。」
「そう思う。」
二冊を重ねる。
淡い光が部屋を包み、一冊の緑色のスキルブックへと変わっていく。
「できた。」
グレンは慎重に表紙を見た。
「……プロテクトオーラ。」
「オーラ?」
説明を開く。
『周囲の仲間の防御力を一定時間上昇させる。』
「これ……。」
二人の声が重なる。
「アイリ向きだ。」
グレンは迷わずスキルブックをアイリへ差し出した。
「覚えてくれ。」
「でも、グレンが……。」
「俺よりアイリの方が活かせる。」
「戦闘中、支援魔法は全部アイリに任せてる。」
「だったら、このスキルもアイリが持った方がいい。」
アイリは少しだけ迷い、それから嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。」
スキルブックを開く。
柔らかな緑色の光がアイリを包み込み、新たな知識が身体へ流れ込んでいく。
やがて光は静かに消えた。
「どう?」
グレンが尋ねる。
アイリは目を閉じたまま、小さく笑う。
「うん。」
「使える。」
その笑顔を見て、グレンも自然と笑みを浮かべた。
「これでまた、安全に戦えるな。」
「うん。」
「もっと頑張って、もっと二人で長生きしよう。」
アイリの言葉に、グレンは力強く頷いた。
「ああ。」
「そのために、明日も頑張ろう。」




