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第八章:帰還の決意と王都の再会
数か月後。
私は、再び地図を広げた。
でも、今度の目的地は──王都。
「リル、行くの?」
「……ええ。帰ります」
「危険じゃない?」
「大丈夫。もう、私は逃げません。自分の選択で、前に進む」
私は旅支度を始める。
今度は逃げるためではなく──
自分の人生を取り戻すために。
王都ドゥランシル。
城の庭園で、一人の少女が薔薇の手入れをしていた。
「……エリゼ」
私が呼びかけると、彼女は振り向る。
「アリゼ様!」
走り寄ってきて、私を強く抱きしめた。
「本当に帰ってきたんですね……!」
「……ごめんね。突然いなくなって」
「構いません。あなたが無事で、それだけで嬉しいです」
その日、私は王宮の一室を与えられる。
身分は「王族顧問補佐」として。
公式には、国外での研究を終えた帰国者ということになった。
イザイアは私にこう言った。
「君が望むなら、爵位も与えよう。ミルフェ家を創設してもいい」
「……いえ。私は、ただのアリゼでいいです」