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第七章:新たな選択
それから一か月。
私はミルフェに残る。
イザイアは、数日滞在した後、王都へ戻っていった。
だが、彼は約束を守った。
私の正体を誰にも明かさず、追手も来なかった。
私は酒場で働き続け、少しずつ貯金を始める。
そして、ある日──
「リル、手紙だよ」
主人が封筒を渡した。
差出人は──「エリゼ・ライン」
私は手を震わせながら封を切る。
アリゼ様へ
あなたがいなくなってから、王宮はとても寂しくなりました。
王太子殿下から、あなたのことを聞きました。
別の世界から来て、私たちの運命を知っていたこと。
断罪される未来を避けて逃げたこと。
私は、あなたを悪役だと思ったことは一度もありません。
ただ、立場が違っただけ。
もし会えるなら、お茶を飲みましょう。
私は、あなたが友達だと思っています。
──エリゼより
涙が、頬を伝った。