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《蒼穹料理闘宴》 第二戦 開幕

《蒼穹上膳房》――天

そこは、前回を遥かに上回る人だかりで埋め尽くされていた。


観客席に入ろうと押し寄せる貴族たち。


高級士官たちが列を作り、

蒼穹殿の外周には一般市民が何重にも輪を作っている。


中にはメディアのカメラまで入り込み、

“第二戦の瞬間”を逃すまいとレンズを向けていた。


この大成功と言える光景に、

大会主催者――閑条かんじょう まいは上機嫌だった。


舞は全身を金色のドレスで包み、

日の光を受けてピカピカと輝く。


そして今日は前回よりさらに盛った、

伝説級ローゼン巻きである。


舞が姿を現した瞬間、

会場は爆発した。


「うおおおおおお!!」

「閑条!閑条!閑条!」

「舞様、その髪型……神ですわ〜!」


舞はゆっくりと歩く。

正に“王者の入場”。


その後ろには、

地味なメイド服にぐるぐる眼鏡が特徴の

閑条 さくらが控えていた。


舞は会場中央、

全体を見渡せる位置に立つと、

マイクを取り出した。


「皆様、ごきげんようですわ」


舞は扇子を広げ、優雅に微笑む。


「わたくし、一週間がこれほど待ち遠しいと思ったこと……

 あまりありませんでしたの。ほほほほ」


観客がざわめく。


舞が腕を上げると、

黒子たちが移動式スクリーンを展開する。


「前回の大会があまりにも好評でしたので、

 今回はスポットで企業さんに参加してもらってますわね。

 皆様、感謝なさいませ?」


そこには――

天華でも名の知れた企業ロゴがずらり。


そして中央に映るのは、

天華で最も売れているバーガー店、

《モスモスマックスバーガー》の巨大ロゴ。


舞は満面の笑みで言った。


「会場に入れなかった皆さんには、

 通称“モックさん”から差し入れがありますの」


蒼穹殿の外周では、

「宮」の可愛いウェイトレス衣装を着た女の子たちが

笑顔でモックバーガーを配り始めていた。


「お一人ずつ無料ですわ。

 今日を楽しんでくださいな。

 ――もちろん、わたくしが一番楽しませてもらいますが」


歓声が爆発する。


舞は続ける。

「なお、前回同様、観客席に座る方は

 天の料理をつまみにご覧なさいませ」


会場が揺れた。

「それでは、長々とお話しするのは、わたくし好きではありません。

 ――第二戦を開始いたしますわ!」


舞はニッコリと手を振りながら、

堂々と上膳房へ入っていった。


会場の外では、

市民たちが配られたモックバーガーをつまみながら、

「まだか、まだか」とスクリーンに注目していた。


「足りない場合は宮に食べに来てね!!」


「宮」のウェイトレス衣装を着た女の子たちが

笑顔で会場を回る。

その愛想の良さにやられ、

市民の何人かはそのまま宮へ向かい、

早くも行列ができ始めていた。


――商魂たくましい。


スクリーンが切り替わり、

映し出されたのは審査員室。


前回同様、

ミトラを被り純白の司祭服を纏った、

容姿端麗の男が座っている。


常に温和な笑みを浮かべるその人物――

サティエム教枢機卿、ナディール・アル・シムス。


シムスは、

審査室にカメラが入っていることに一瞬驚いたが、

すぐにメディア慣れした表情に戻る。


「前回、とても素晴らしかった。

 また来られて嬉しいです。

 ――神の導きあれ」


静かに祈りを捧げる。


続いて映るのは、

宰相・六道院ろくどういん 実道じつどう


「がはは! また未知なる物か、それとも定番か。

 何が来ても楽しみじゃ!」


禿げ上がった頭を豪快に撫でながら笑う。


その横で――

ひとりだけガチガチに緊張している女性がいた。


犬飼 みお


母のお古だが仕立ての良いドレスを着ており、

澪の雰囲気によく似合っている。

今日のために選んだ“ここ一番の勝負服”だ。


「あ、あの……どんどん大きくなって……

 緊張してます……」


澪は小さく震えながら、

それでも真剣に答えた


スクリーンが切り替わり、

映し出されたのは――厨房。


真っ先に映るのは、

赤髪の青年 森ジャック。


前よりも筋肉量が増えたのか、

コックコートがはち切れそうに膨れ上がっている。


舞は映像を見て、

扇子で口元を隠しながら笑った。


「おほほほほ……

 今度は遅刻しないで来れましたわね、森ジャック。

 それでは、初めは森ジャックからですわ〜」


会場が一気に沸き立つ。


「アレが……“深淵幻海老”を初めて料理した男か」

「やっぱ生で見るといい男ね……」

「きゃーー! ジャックーー!!」


どうやらジャックにも、

しっかりファンがついたらしい。


厨房のジャックは、

漆黒の包丁を取り出す。


だが――

その手が、わずかに震えていた。


隣で見ていたバフが、

首をかしげる。

「うぃ~うぃ~」


ジャックは包丁を握り直し、

ほんの一瞬だけ視線を泳がせた。


普段の豪快さからは考えられない“動揺”。


その理由は――

ジャックは何とか、少し余裕をもって会場に来た。

だが厨房で聞かされたのは、

茜が攫われた事件。


寝耳に水のことにジャックは驚く

「……馬鹿か俺は。

 どうしてついて行ってやれなかった」


胸の奥がざわつく。


厨房ではシェフたちが集まり、

順番決めの話し合いが行われていた。


その中で――

久遠優が偉そうにジャックを見上げながら言う。


「おいおい、茜ちゃん大変だったぜ?

 お前、知らないだろ~?」


小さな体でやれやれと肩をすくめ、


「俺様の活躍でよ、

 茜ちゃんは今この場にいるんだぜ~~~!」


優は完全に“盛った武勇伝”をぶちまけ、

偉そうに語り続ける。


ジャックは茜に向き直る。


「……本当、なのか……?」


茜は本当は聞かれたくなかった。

だが優のせいでバレてしまい、

仕方なく小さく頷く。


その瞬間、

優はドサクサに紛れて茜に抱きついた。


「恩人だぜ〜〜!」


ニヤつく優。


「がははは!

 もう俺の女だ!!!」

勝ち誇る優、茜に抱き着いて離さない優を……


ヒョイ。

リカが茜に抱き着く優を引きはがす。


「優様駄目ですよ、茜様ごめんなさい」


今日のリカは――

白のコックコートがそのラインを際立たせ、

出るところは出ているを強調している。


コックコートを着たレアなリカが、

涼しい顔で優を両手で持ち上げていた。


茜は苦笑しながら、

「いえ……あの節は、本当にありがとうございました」

とリカに頭を下げる。


リカと茜の目が合うと、

ふたりはどこかくすぐったそうに微笑み合った。


「ばっきゃろ~~!!」

ふんふん暴れる優。


リカはため息まじりに、

「はいはい」と軽くあしらう。


その間に順番が決まり、

一番手はジャックに決まった。


圭吾はというと、

どこか上の空で元気がない。


マスクを被った男――叶が言う。


「圭吾くんが二番手か。

 なら最後は俺たちだな」


ジャックは浮かない顔のまま、

自分の料理の準備を始めた。


(茜が……攫われただと……?)


茜はそんなジャックの様子に気づき、

そっと声をかける。

「ジャック、大丈夫だよ。

 もう私は……平気だから」


茜は元気に言ったつもりだった。

だがジャックには、

その笑顔が“空元気”に見えてしまう。


(……いかん。集中だ)


ジャックは深く息を吸い、

黒山狂哭包丁を握り直した。

(……落ち着け。

 コイツは集中しないと味が落ちる。

 余計なこと考えてんじゃねぇ……落ち着け、俺)


目の前の、厳重に封じられた包へと

静かに意識を向ける

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