<江戸の話>
「おかえり」
「ただいま。あなた」
夜遅く、俺は屋敷へと帰ってきた白月は強く抱きしめる。白月は七歳となった忍月を連れて江戸へと行っていたのだ。
「それでどうだった久しぶりの江戸は」
「楽しかったわよ」
「それで松菱の御奉行は?もう引退していただろう」
「ええ、三年前にね。でもそのあとすぐに亡くなったそうよ」
「そうか・・・」
今思えばすべては松菱の御奉行の計らいであった。俺の話を信じ、俺と白月を一緒にさせてくれた。もし松菱がいなければ、もし江戸町奉行が松菱でなければ、いったいどうなっていただろうか・・・。
「でも、御奉行が亡くなっても私たちは変わらないわ。私は私なりの方法でこの日ノ本が平和でいられるように全力を尽くす。そしてあなたはずっと私の夫であり続ける」
「ああ」
そして俺と白月は抱き合ったまま布団の上に倒れ込む。
「それで、御庭番のほうはどうだったんだ?」
「楽しかったわよ。忍月なんか志乃様にコテンパンにやられちゃった」
「大丈夫なのか、それ」
「あの子は獣人相手ならまだしも、人間相手だと甘く見る癖があるからちょうどいい薬よ」
どうして忍月が志乃にコテンパンにやられることになったのかその経緯は分からないが、あの子も元気なので志乃に挑んでいったのだろう。
「それで、忍月は立派なくノ一になれそうか?」
「素質はいい、あとはそれを教える私次第だと志乃様に言われたわ」
「そうか」
忍月は立派なくノ一になるだろう。なぜなら白月と俺の子供なのだ。だが、それよりもさらに立派なくノ一が俺の目の前にいる。
「で、どうするんだ?そのまま御庭番に戻りたくなったんじゃないのか?」
「あら、私が戻ったら一体誰があなたのお守をするのよ」
そこまで手間がかかるかと聞いてやりたくなるが、ここは白月にのることにした
「そこまで面倒見てくれるのか?」
「私があなたをここまで連れてきたのよ。その責任は取るわ、だから安心して私についてきなさい」
「じゃあ、俺はどこまでも、しつこいぐらいついていくぞ」
「せいぜい振り切られないように頑張りなさい」
俺の言葉に白月のほうが恥ずかしくなってしまったのか顔を背けてしまう。素直でない白月は本当の気持ちを隠すためにきつい言い方になりそれと同時に顔を見られないようにするのが白月なのだ。そしてそんな時は尻尾を鷲掴みにしてやるのが俺である。




