<常識>
ある日の夜。いつものように白月と布団に入っていると俺の背中に白月とは違うぬくもりが入り込んできた。
「あれ、起こしちゃった?」
「どうしたのよこんな時間に」
「お姉ちゃんに子供が生まれたんだから帰ってきたに決まってるでしょう」
どうやらその正体は黒月のようである。布団の端から俺をどんどん押し込んで白月へと押し付けていく。
「狭いんだが」
「こんな布団に三人も入ってるんだから当たり前でしょう」
「そもそも何で勝手に入ってくるんだよ」
俺は白月と協力して黒月を布団な中から追い出そうと押し返していく。すると黒月は布団の中のまま俺と白月の上に乗ってそのまま俺たちを抱きしめる。
「まさかお姉ちゃんも子供一人だけで済むとか考えてないよね」
「それぐらいわかってるわよ」
黒月の言葉に白月は少しムッとしたように言い返す。そして黒月は俺と白月に聞かせるように何かといってくる。
「まだ生まれたばかりだし、子供は弱いからいつ死んじゃうかもわからないよ。そのためにはあと一人か二人、いや三人ぐらいは生んでくれなくちゃ」
そう言えばまだ医療の発展していない時代は多産多死、子供が死にやすいこともあって多くの子供を産むのが一般的だった。俺の常識ではありえないが、この時代では黒月の言っていることが常識なのだ。
「とりあえず、お姉ちゃんには朝風さんを手籠めにしてもらってー、房中術でも媚薬でも使える者は全部使ってもらわないとダメかなー」
すると、黒月はさらに強く抱きしめて俺と白月はぴったりとくっつけられる。
「お姉ちゃんはもちろんだとして、朝風さんも協力してくれるでしょ」
黒月は俺にも強烈な圧力をかけてくる。白月が黒月の存在にあきれ、苦手としているのが何となくわかるようである。
「まったく、だったらあなたは出てって私たち二人にしなさい。あなたが居なければ私たちももっとうまくいくわよ」
「そんなこと言っちゃって。私が居なかったらただ二人でぐうたらしてるだけのくせに」
そういうと黒月は布団の中に沈んでいくように俺たちの足元から布団を抜け出していった。だが、黒月はどういうわけか白くて大きい布を持ったまま去っていく。
「まったく、あなた、いま裸よ」
「え?あ!」
白月の言うとおり、気がつくと俺は服を着ていない。裸である。一体いつのまにやったのか
「仕方ないわね。ほら来なさい」
俺は白月に抱き寄せられて布団の中に引きこもる。これでは黒月の思惑通りだ。しかしこの寒い部屋でいまさらどうしようもない。
結局、俺と白月は布団の中で身を寄せて肌を重ね、さらに寒くなる明け方まで二人で温め合ったのである。




