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 休憩を挟んだあと、 ミルヒはあきれ顔で言った。


「取り乱してしまってごめんなさい。ここからが本題中の本題。先日、アルナイルがアーク・デーモンを治癒魔法で大爆発させてしまったお陰で、大気中の黒ジェム含有率の均衡が破られてしまった――人魔族が前回の復活から千五百年間ずっと守り続けてきた秩序が、一夜で崩れたといっても過言ではないわね」


「俺のせいで……」

「辛気臭くなる必要はないわ。私は事実を言っただけ。寧ろアルナイルが現れたことの方が好都合なの。アルナイルにはキング・デーモンを守護する三体の強者――三軍神と呼ばれる神様をアルナイルの手で葬り去ってほしいのよ」


 神様を殺める――。

 世界を破壊へ導く引き金を引いて尚、神殺しの烙印も背負わないといけないのか。

 レスターは唾を飲み干し、顔から生気は全く感じられない。


「神って言っても所詮はただの肩書きよ。私から言わせてみたら、寝たら忘れる程度の愚かな神、邪神ね。何しろ名前も分からないぐらいだから」

「そういうものなのですか……」


 レスターはミルヒがぞんざいに神を扱うものだから、血の色を失っていた顔色を直ぐに戻した。

 つうか倒してほしい敵の名前、資料不足ってことで、不明って相当強いんじゃ……。

 

「問題はその三軍神はヒール値1から1.15の間の治癒魔法でしか倒せないこと。おかしな話だけど現実よ。取り巻きのノーマル・デーモンやアーク・デーモンは縛りが緩いから問題にもならないんだけど、三軍神ともなるとね」

「だから俺が必要なのか」

「御明察。限りなく1に近いヒールをぶつけて、三軍神が宿す黒ジェムを浄化しなさい。そうすればキング・デーモンは暫くは復活しない筈よ」

「でも問題にならないと言っても、昨日はその問題にもならないアーク・デーモンが大爆発したぞ……」

「恐らくヒール値が1.55を越えていたのよ。超えないようにすれば大爆発の心配はないわ。きちんと治癒魔法を制御出来れば、黒ジェムは壊れてくれる筈よ」


 レスターは六年目にして漸く神官が口走った言葉の意味を理解した。

 スキル1である意味――その本質である。

 つまりレスターの治癒魔法には、黒ジェムにヒール1を当てると即死する特典がついていたということ。

 制御さえ出来れば、勇者でさえ倒せなかったデーモンを一撃で屠ることが出来る最強の魔法を、知らぬ間に手に入れていたのだ。


 レスターは喜びつつ、冷静にミルヒに訊ねた。


「ヒール量はまあ……追々気を付けるとして、キング・デーモンの件はどうするんだ? 三軍神を倒すだけだと、根本的な解決になってないんじゃ……」

 レスターの問いに、ミルヒはシレっと答える。


「御託を並べる暇があったら、ヒール1の鍛錬でも積みなさい。今のアルナイルはまだ治癒魔法に乱れがあって安心して見ていられないわ」

 

 また無視された――。

 レスターは突っ込みを入れたく口をごにょごにょさせるも、


「言いたいことは多々あるのは承知よ。でも少なくともアルナイルが心配する必要はないわ。今回倒した後で、次に復活するときには私もアルナイルも、恐らくここにいる人魔の皆も含めてこの世界にいないし――早い話、次の魔王なり腕の立つ人魔なりにキング・デーモンの討伐は任せるわ」


 レスターは顔をしかめる。

 ミルヒが言って見ろと言わんばかりの顔を見せるので、レスターは本音をぶつける。


「理由はどうあれ、問題の先送りとは一国の王としてどうなのかなと思いましてね」

 レスターの言葉に、ミルヒは素早く呼応する。


「統治を始めて八百年、毎日ずっと考えたけど他に思いつかないのよ。兎に角明日から、お願いね」


「出発、明日なんですか……幾らなんでも早すぎません?」

「目的地にはきちんと印つけておくから。一人で出来るわよね」

 まただ。

 ミルヒは質問に答えない。このときばかりは流石にレスターも怒鳴る訳で――。

「んなこと出来る訳ないじゃないですか!! 家臣の一人や二人を――」


 言いかけたレスターを尻目に城が小刻みに揺れた。

 拍子抜け、レスターは揺れが収まったらたくさん怒ってやろうと思ったときのこと。


 不思議なことが目の前で起こった。

 レスターは認知する前に倒れていた。

 同時に今迄耳にしたこともない強烈な音が、謁見の間に響き、耳を押さえながらレスターは音源に視線を向けると、それはあった。

 今迄文献でしか見たことのない、けた外れの性能を持つ武器をミルヒは両手で持っていたのだ。


予備知識


ノーマル・デーモン:ヒール値1.7以上の場合大爆発オーバーフロウ

アーク・デーモン:ヒール値1.55以上の場合大爆発オーバーフロウ

三軍神:ヒール値1.15以上の場合大爆発&キング・デーモン復活

キング・デーモン:ヒール値1でのみ討伐可能。



アーク・デーモン、ノーマル・デーモンの正しい倒し方。


1.通常通り倒す。

この場合は両者と戦い、各々を弱らせる必要がある。

弱った個体はヒール値の上限値の縛りが緩やかになるので、ヒール値に囚われず倒すことが出来る。

元来の人魔はこの方法で倒していた。


メリット

時間をかければ誰でも倒せる。

デメリット

昨今のアーク・デーモン、ノーマル・デーモンは基礎値が三千万超えと強いので、弱らせるのは至難の業。


2.ヒールを当てる。

例外的にヒールをアーク・デーモン、ノーマル・デーモンの胸に植わる黒ジェムに当てると力を供給する媒体がその能力を失う為、両者は活動を止める。(つまり死ぬ)

メリット

ヒールを当てるだけで良いので、素早く倒せる。

デメリット

決められた値以上のヒールを当てると、大爆発を引き起こし、大気中に黒ジェムの瘴気を解き放ってしまい、次に出現するアーク・デーモン、ノーマル・デーモンが強くなってしまう。(負のスパイラル)


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