↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/18

終焉の序曲

俺の意識は深い濃紺の水の中に囚われ、外の世界を見ることしかできなくなった。

俺の意識は、自分の顔が快楽に歪むのを感じた。

飛来する弾丸を無視して、1人、2人と斬る。手に伝わる、肉と骨を断つ柔硬の感覚は、俺の体を支配する『何か』を悦楽に導く。

俺の意識の抵抗を無視して、『何か』は本能的に体を動かす。

だが、体を動かすことができない体だったが、痛みは感じなかった。見ていて、数発当たったはずだが、痛くなかった。

不思議なことに、次第に俺は、このままでもいいか、と思った。

本能的殺戮は、普段の俺より圧倒的に強い上に痛くない。この後何事もなく俺の意識に体が帰ってくるなら、別に焦ることでもない。

『何か』がもたらす圧倒的な快感に俺は酔った。

やがて、俺の意識は水に沈んだ。


最初に訪れたのは、痛覚神経への刺激だった。

「…ッ」

両手の剣を取りこぼして、うずくまる。

どうやら、『何か』は消えたようだ。消えたという表現が正しいかはわからないが。

「イアン!」

アテネの声がかろうじて聞こえる。戻った意識が、一瞬で回れ右しそうだ。さっきまで俺に快楽を与えていた『何か』は、代償として残る傷を与えたようだ。

「お前凄かったぞ。弾当たってんのにいたそうな風もなく、ばったばったと倒しちまう。俺たちは助かったが、ある意味怖かったな」

アテネに介抱されながら、リタの言葉を噛み砕く。末端神経が死にかけながら、俺の頭は一つの言葉を浮かべた。


--戦闘狂。


その瞬間、俺は縮み上がった。

俺の意識は体から離れていき、冷徹な眼差しで俺の中の『戦闘狂』を見る。それは、鼓動のように蠢いて、絶えず血を欲していた。

--コロシタイ。キリタイ。ツブシタイ。チガホシイ。

「…違う。そんなのじゃない」

--ウソツキ。

頭に、『戦闘狂』の声がこだまして、俺の意識を揺する。

--コロシタイ。キリタイ。ツブシタイ。チガホシイ。

「…止めろ!」

「…イアン?」

アテネに声をかけられて、『戦闘狂』は姿を消した。

「…大丈夫だ」

心配そうな3人に作り笑いで答えると、次第に意識が遠退いた。

世界が暗転した。


手の平がじっとり汗で濡れている。

額に浮かぶ汗も、暑さからくるものではない。

次々と寄せられる戦況報告が、東吹抜間(ひがしふきぬけのま)の空気を重くする。

そして。

「…蛍王様、よろしいでしょうか?」

意を決したコルは、蛍王を呼び寄せた。

「なんでしょう」

まだだ。もっとひきつけろ。

蛍王がコルの目の前に立った。

--今だ!

手元の紙束からナイフを取り出し、蛍王に突き出す。

心臓を狙った渾身の一撃だったが、蛍王は驚愕の表情と共に身をよじった。当てが外れ、ナイフの刃は蛍王の左脇腹を切り裂き、コルは2合目を放てず、親衛隊のお縄となった。

僅かの間の出来事に誰も言葉を発することができなかった。


「ん、ううん」

俺は目を覚ました。辺りの様子からみて、一瞬のことだったらしい。

「大丈夫か、イアン」

「…ああ」

緩く頭を振って、リセット。

一度閉じた目を開けると、遠い道に、見覚えのあるシルエットが映った。

その瞬間、俺は走った。

敵に出会う可能性すら考慮せず、

「ヒエラー!」

叫んでいた。

次回の更新は、Twitterフォロワー100人記念のクロスオーバーの予定です。「mightシリーズ」のキャラクターも登場しての短編になる予定です。もし、「mightシリーズ」をお読みでない方がいらっしゃれば、御一読下さると嬉しいです。

また、短編は現在の舞台とは違うところでのお話です。つまり、本編は一回お休みです。「本編にしか興味ねえよ、馬鹿野郎!」という方がいらっしゃれば、その次の更新まで待って頂きたい。お付き合い下さるならば、しばしの箸休めを楽しんでいただければ幸いです。

本編に関して、あと二回で完結の予定です。最終回、その後の執筆後記までお付き合いください。なんとか、伏線を回収して、辻褄を合わせて完結させます。

今後とも、SaLaへのご高配を賜りたく思います。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。