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王宮内部

心なしか空が赤く染まってるように見える。

それは、破壊の炎を表すのか、流れる血を表すのか。


王宮政務官の1人が青い顔に緊張の色を浮かべて、重厚な扉をノックする。そして、返答を待たず押し開ける。

中は蜂の巣をつついたような有様だった。実際には国の中枢をつつかれているのはこちら側だが、それしか言葉が無いから仕方ない。

この宮殿で一番広い『東吹抜間(ひがしふきぬけのま)』には、その広さに見合うだけの人が(ひし)めいていた。

扉の蝶番(ちょうつがい)は、慣れない仕事に疲れたのか政務官が思ったより大きな音を響かせ扉を開けた。

「どうしました?」

美しい女性の声がざわつく人々を黙らせた。この部屋の全ての視線が政務官に集中した。

政務官は、乾いた唇を舌で湿らせると

「報告します、第三区画陥落、第五商業区陥落、第四防衛隊全滅」

手にした報告用紙には、具体的な死人と怪我人の数、経済的損失などが書き並べてあるが、その数は当初予測されていた数値から悪い方向に遠かった。

「わかりました。下がりなさい」

「は」

政務官が部屋を出ると、軍令部長は

蛍王(けいおう)様、やはりお逃げ下さい。ここももうじき火がかかるでしょう」

蛍王、と呼ばれた女性は、

「なりません。この国を置いて私だけ助かっても意味がありません」

苦虫を噛み潰した軍令部長は、

「御意に。宮殿の護りをもう少し増やしましょう」

と言った。

しかし、蛍王も軍令部長もその他の高官も護りを増やしても無駄であることを知っていた。

「和睦交渉の準備を進めましょう」

内政部長が放った言葉は、その場の人々に負けを否応無く想像させた。

「必要ないわ!お前は本当に負けると思っておるのか!?」

血の気の多い軍令部長は、イライラ10割増しで内政部長につっかかった。

「違う。準備と言ったはずだ。よもや、頭だけでなく、耳も悪くなったか?」

内政部長も、やや心が穏やかではないようだ。

「…なんだと!?お前は--」

「お辞めなさい」

蛍王にたしなめられて、2人は黙った。だが、そんなことを涼しい顔で見ている男がいた。

技巧局長、コル。

その目はせわしなく泳ぎ、まるで何かを待っているようだった。

またも、大きい悲鳴をあげて扉が開く。

今度は政務官でなく、技巧局幹部だった。

「局長」

報告書のような分厚い書類を手で渡し、幹部は頷いた。

コルは、その紙束からナイフを取り出した。

「わかった」

そうコルが返事をすると、幹部はもう一度頷いた。

「--蛍王様の始末を」

「--ああ」

次回最終回の可能性あり。

そうではない可能性もあり。

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