王都遷入
長い雨の日々を抜けて、ようやく快晴となった。
蝉が泣き始め、動物たちも久し振りの日光に動き始める。
しかし、その青空の下、人間たちは浮かない顔をして過ごしていた。
むしろその顔を青空と同じ青色にして、まるで幽霊のように足を引きずって歩いた。
「…再編成の命令は出ていない」
一度撤退してしまえば、ズルズルと戦線を後退させ、もう王都一歩手前の北都街道に建造された砦に軍はいた。
「だが、部隊の運営上、事実的な隊長が必要だ」
リタが静かに話すのを、俺たちは土気色の顔で聞いていた。
「…その隊長役を誰がやるのかという話だが」
「お前しかいねえ」
「貴方ね」
「…同意」
「……。」
おいおい。ここに来て俺はやらんぞとか言われてもどうしようもないぞ。
「…仕方ない」
リタが渋々といった表情で了承した後、沈黙が降りる。
たった5人の部隊から、1人抜けることがいかに大きいか。
この数日で思い知らされた。
あの後、リクヤが生還したという知らせはない。
胸にぽっかり穴が空いた。
「…クソッ」
傍らの剣を眺める。
コルがイアンに託した、自律兵器に対抗し得る唯一の武器。
そして--
おそらく、ガロウの技術で作られた剣。
ああ。やらねばならないことが山積みだ。
既にヒエラたちは王都に避難しているが、次にガロウが攻めてくれば、王都にこもるしかない。いくら自律兵器を倒したと言っても、複数を相手にすれば殺されるのは火を見るよりも明らかだ。
ともすれば、やはりこの命を差し出す覚悟はしなければならない。
イツカはどうなっただろう。
イツカとリクヤはなにか因縁でもあったんだろうか。
だとすれば、2人仲良く死んだのだろうか。
ダメだ。頭が回らない。
昼間の白い日光が、イアンには眩しく感じられた。
「っざけんな‼︎どうしてこうなった!?」
俺は叫んだ。轟く爆音、響く銃声、唸る悲鳴。
空はのんびり快晴。
地上は地獄。
ダダダダッ。
手に伝わるリコイルショックに顔を歪めながら、弾をばらまく。
「…こんなにどこから沸くのよ?」
アテネに同意。
夜明けと同時に砦が襲撃を受けた。
現場は発令されていた第6号作戦を展開し、防衛に当たった。何せ後ろは王の住まう王都だ。後退の余地が無いここに来て、火事場の馬鹿力とでも言うのか、粉骨砕身の働きを各兵士はみせた。
ただ、それ以上に敵の数が増えていた。第6号作戦はこれまでの襲撃から、敵の大体の規模を予測して、その規模にあった作戦だったから、いくら働いても、戦線は瓦解。既に俺たちは王都に入っていた。
あちこちで、一般市民も巻き込まれている。
俺はヒエラが気になって仕方なかった。
ハルルにいた頃にはそんなこと思わなかったけれど、なぜか気になった。
「クソが…生きてろよ、ヒエラ…!」
そろそろ完結!




