番外編 ローワンの危機 中編
「うわぁ!キツネとタヌキが浮いてる!」
「落ち着けよ、これは透明化の魔法だ。最もどこの誰かは分からないけれど」
みーちゃんを頭に、ぐーちゃんを腕の中に抱いて森に突入した私は、騎士たちをざわつかせてしまった。そして目の前にいるのは、かつて攻略対象であった『正統派騎士』レオンハルトさんだ。
「……ババリアーナ……じゃない、ババ、の方かな?」
「レオンハルト、知り合いか?」
「キツネとタヌキをいつも連れ回していたから……あと、ババリアーナ嬢だったら普通に透明になる理由がない」
「ご名答ですわ、と、ローワン先生のピンチですのよ!ローワン先生はいずこに?」
「先生なら森の奥へ向かったけど」
「まさかお一人で!?まずいですわ、森の奥ってこっちかしら??」
「ちょっと待って、まさか一人で行こうとしてる!?」
騎士の皆さんがあっけに取られる中、私は森の奥へと向かおうとして、レオンハルトさんに止められた。
「貴女は魔法も使えず武器も持ってない、自殺行為だ。あと森の奥は反対」
「す、すみません……案内していただけます?」
騎士の皆さんと一緒に歩いていく。ローワン先生から待機命令が出ていたらしいが、レオンハルトさんはどうやら副隊長らしく、非常事態につき俺が指揮を執ると言ってくれた。
「ローワン先生が何故ピンチなの?」
「さあ…アガーテ先生は『相性が悪い』と仰ってましたが」
「魔物の特徴は?」
「巨大なドラゴンとのことですわ」
「……?対象がでかいなら、ローワン先生はむしろ得意な相手に思えるけど…」
「歩くのも素早いですし、魔法も使えますし、ローワン先生は無敵ですわよね!?」
「歩く速度はあんま関係ないかな」
森の奥から地鳴りやら唸り声が聞こえる。ドラゴンがいるのは間違いなさそうだ。
「いた!ローワン先生」
「お前たち!何故命令を無視した………そこにいるのは、馬場だな?」
「に、にゃーん」
「キツネとタヌキが猫の声で鳴くか馬鹿者」
「ローワン先生!先生がピンチとのことで、私アガーテ先生より秘密のアイテムを預かりましたの!」
「何故だ?」
「相手は巨大なドラゴんーーー
私が言いかけたところで、ローワン先生の後ろの木が薙ぎ倒され、けたたましい鳴き声に誰もが怯んだ。
「ドラゴンだ!!」
「こいつ、一撃で巨木を!!」
「ローワン先生、指示を!」
咄嗟に私を庇ってくれたローワン先生のお顔が目に入る。………蒼白だった。
「ろ、ローワンせんせ??」
「言うな、何も言うな。相手の特徴とか絶っっっ対に口にするなよ」
「な、何故……?」
ドラゴンが次々と木を倒し、ローワン先生の指示を待つ騎士たちはそれをひたすら避け続けた。そしてローワン先生は何故か口元を抑えて今にも吐き出しそうだった。
「な、何かよく分かりませんが!今こそこれを使うべき時な気がします!!!」
私はローワン先生の腕の中から出て、ガラスの瓶を思いっきりドラゴン目掛けてぶん投げた。
ガラスの瓶はドラゴンの十メートルぐらい手前で落ちた。ノーコン残念。




