↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生しましたが、王子がイケメンすぎるのでおじさんに逃げます。  作者: 葉月はるか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/86

番外編 エヴァンの生き甲斐 後編

シオダの『家』は、本当に犬小屋のようだった。

家というより部屋だ。厨房も居間もなければ付き人もいない、これが平民というものか。


「言っとくけどな!!!オメェら顔に哀れみが出てるんだよ!!これでも家賃十万だからな!!俺は立地で選んでんだよ!!」

「僕、初めて優越感というものを知った気がします…」

「私も、このような民たちを無くし、国全体を豊かにさせなくてはと、身が引き締まる思いですわ」

「お前らはまず思い込みを捨てろ!!」


シオダは狭い部屋の中の、さらに仕切られた一角にある、壁側の薄い黒い板をいじった。すると黒い板は光り出し、その中に絵が浮かびあがった。


「これは、何の魔法ですの?」

「ババリアーナ様、絵が動いています!伝声水晶の一種でしょうか」

「魔法じゃねぇよ、電気と電波だ。まあ見てろ」


シオダが何やら虹色に光る丸い板を箱の中に入れる。すると、黒い板に女性が浮かび上がった。


「………これは、お前の服の…」

「悪役令嬢な、これはアニメ。なんつーか、動く絵本とか平たい劇だと思え」


そこから先はあまりの衝撃に言葉が出てこなかった。その物語はあまりに鮮やかで、美しい音楽に彩られ、面白おかしくも切なく、最後は胸を穿たれたような痛みに襲われた。


「………………」

「…………すごかった、ですわ」

「だろ!!!??すげぇだろこのアニメ!!!お前ら人生初のアニメがこの作品だったの、最高に恵まれてんぞ!!」

「…………………………シオダ」


僕を突き動かしたのは、経験したことのない衝動だ。これはこの世界でこいつにしか頼めない、ならば絶対にこの機を逃すべきではないのだ。


「っエヴァン!!手荒なことはやめてくださいまし」

「何だテメェ、その見た目で胸ぐら掴まれても全然怖くねぇぞ?」

「…………………………他の『あにめ』も、教えてくれ」


ババリアーナ様が目を見開き、シオダはにやにやと笑っている。それすらもどうでもよかった。僕には、なりふり構っていられない、欲しいものが出来たのだ。

ふと、ババリアーナ様が僕の服の裾を掴んでいることに気付いた。


「……遠くへ行かないでくださいまし」

「ババリアーナ様……」

「貴方が、私以外の何かに夢中になることは、とても喜ばしいことだと思いますわ。でも、私は今とてつもない喪失感の中におりますの」


こうして見下ろすと、いつも威厳に満ちたババリアーナ様は、何と小さくか弱い存在であるのだろうと思えた。


「………くそ」

「どうしましたシオダ、何故泣いているんですの」

「泣いてねえよ!!!た、玉ねぎが目に染みただけだ!!」

「玉ねぎの匂いなんてしませんが…??」

「うるせえ!!!」


僕にはシオダが何故泣いたのか、理解できた。こいつババリアーナ様が大好きなんだ。癪に障るような気もするが、誇らしい気もする。


「……ババリアーナ様、僕、こいつと仲良くなれそうな気がします」

「お前が勝手に思ってるだけだ!!!アニメは教えてやるけどもよ!!何系がいい、感動系か?お笑い系か?ダークなのもある」

「主人公が気が強くて素直じゃないけど本当は優しい人がいい」

「悪役令嬢は大体そうだけどよ!てめーの好みは分かった。それだとコレかコレがいいな」

「ちょっ…勉強!私たちは文明を学びに来たのですわー!!!」

「いいぜ、テレビが何で付くのか説明してやるよ、アニメ再生しながら」


ババリアーナ様がむくれているが、そんなお顔も美しく可愛らしいと思う。多分横にいる男も同じことを考えているのだろう、口元を押さえて俯いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。