番外編 エヴァンの生き甲斐 中編
「………よお」
「……………………」
「くそこらエヴァン!俺の姿でおどおどすんな!黙るな!なんか喋れ!!!」
「やめてくださいましシオダ。エヴァンが怯えていますわ」
「まず髪切れよ!!」
「ご自分はピンクの縦ロールでしたのに?」
「あれは事故だ!!!」
これだから僕はこの男が嫌いだ。
品性のかけらもない、粗野で横暴で、会う人を威圧してくる。
「……………」
「おっ、なんか喋るのか!?」
「お静かになさいまし!私以外の人間と話すところ、とても久しぶりに見ますわ」
「……………服」
「「服!?」」
ババリアーナ様とシオダが同時に声を上げた。
どんな罵詈雑言を浴びせてやろうかと迷っていたが、シオダの着ている服が目に入ってしまったのだ。
「お、これか?今アニメ放映中の『悪役令嬢は将軍様』の主人公のシャツで、大手メーカーの期間限定コラボ…少しババリアーナに似てるか??」
「………………………センスは、悪くない」
ババリアーナ様ほどではないが、長く束ねられた黒髪に切長の鋭い目つきが優雅な女性だ。やたら胸部が強調されてるのは目のやり場に困るが。
「これ元が小説で、タイトルから想像もつかねぇほど主人公が奇想天外な出来事に巻き込まれまくるんだよ、んで伏線回収が見事でな…アニメの出来も滅茶苦茶良くて、斬り合いの部分の作画のこだわりがすごくて」
「詳しく」
思わず食いついてしまった。ババリアーナ様が何事かと僕を見ている。シオダの顔色がぱっと明るくなった。………こいつ、認めたくないが、好みが僕と似ている。
「んだよ、お前も悪役令嬢好きかよ!小説貸すぜ、ブルーレイも…おっと再生機器がねえな、俺ん家くるか?」
「行く」
「お、お待ちなさい二人とも!私を蚊帳の外にして意気投合するのはおよしなさい!」
「お前も来ればいいじゃねーかババリアーナ」
「と、殿方のお部屋に行くのはちょっと…」
「平民ですよババリアーナ様!犬小屋に行くのに何のためらいがありましょうか」
「誰が犬小屋住まいだテメェ」
シオダの家は灰色っぽい町の中に所狭しと建てられた建物の中の、赤茶けたレンガ造りの家だった。
「悪いな俺のアパート、エレベーターなくて」
「玄関が二階ですの?変わってますわね…」
「お前らまさかこの建物全部が俺ん家だと思ってないだろうな」
「違うのか?」「違いますの?」
「この貴族どもが」




