俺…私と勝負しろ
「こう、ですか」
「違います、手はドレスに添えて、お辞儀の角度はこう。足を軽く引いて腰を落とす」
ミラベルさんの厳しい令嬢指導が始まった。ババリアーナの威厳を守るためだ、仕方ない。
「ミラベルさん、私ババリアーナの記憶を早く取り戻したくて。ババリアーナの元の言葉遣いや立ち振る舞いの特徴を教えていただけるかしら」
「まぁ…ババリアーナ様!そうですわね、お嬢様はいつも気高くしなやかで、何事にも動じないお方でしたわ。無駄な動きはせず、余計なことも喋らない。必要以上に馴れ馴れしくせず、常に誰とも距離を置かれてましたわね」
「つまりつんとしてむすっとして、ぼっちだったと…」
「言い方が酷すぎます!孤高の狼のような方だったと仰ってくださいな!」
ミラベルさんには悪いが、それ周りからの印象悪くならないだろうか。それともう一つ。
「…あの、ミラベルさんこの間『美貌』と仰ってましたけど、私チビでデブでメガネで美しいとはとても…」
「まあ!少々小柄でぽっちゃり気味なだけですわ!美しさは所作に現れるのです、内面をお磨きくださいませ」
ミラベルさんの目は相当に曇っているようだ。身内贔屓にもほどがある。
来週までローワン先生の授業はないようだ、残念。それにしても、先生は絶対元の私、『馬場』について何か知ってると思ったんだけどな。
教室に入ろうとすると、ドアの前に立ちはだかる令嬢……令嬢?がいた。
真っ黒い髪に真っ赤な薔薇のカチューシャ、制服のあちこちに黒と赤のリボンをあしらっている。校則違反じゃないのかしら。そして何より、…ガタイが良すぎる。170センチ半ばはありそうな高い身長に隠れきっていない筋肉。令嬢の格好した男だ、絶対。
「お前か!?ババリアーナ!!俺…私と勝負しろ!」
「声、ひっく」
「うるせえ!表に出ろ!」
周りがざわつく。他所のクラスからも何事かと人が見に来る。先生誰でもいいから早く来て、止めてー!!!
…こういう時、ババリアーナならどうする?
「お静かになさいまし、周りへのご迷惑を考えあそばせ。私に用ならば授業の後に聞きましょう」
辺りがしん…と静まり返る。私、今ババリアーナ、出来たかな!?
「ババリアーナ嬢の言う通りです、まずは席に着きなさいエヴァン」
後ろに怖い顔のおばあちゃん先生がいた。助かった。




