貴女の、本当の、お名前は?
「…転送魔法が成功したら、もう二度と会えなくなるわね」
アガーテ先生の言葉に、皆が黙ってエヴァンを見る。
「おい、なんだよ!皆揃って…」
その時、外からいくつか声が聞こえた。
「ーーリリア嬢、ここです」
「ご、ごめんなさい!封印、破きます!」
アガーテ先生の封印魔法を解いて、凄まじい音とともに入ってきたのは、リリア嬢とペネロペ嬢だった。
「リ、リア…」
「ババリアーナ様!帰ってしまわれるのですか!?何故、一言仰ってくれないのです!」
「や、私はババリアーナじゃないから…」
「貴女の、本当の、お名前は?」
「……………馬場です」
腰に両手を当て、顔を目一杯近づけてきたリリア嬢を、初めて怖いと思った。
後ろでアガーテ先生が、生徒に解かれるようなレベルの魔法じゃないのに!って悲鳴をあげてるし、ペネロペ嬢は写真を撮りまくっている。カオス。
「私たちはもう友達ですのよ?ババ様」
「…へへ、友達かあ」
「貴方たちもです、エヴァン様、ローワン先生」
「…塩田だ」
「成島」
「よろしい。お別れの挨拶をさせてくれたら、許します」
腕を組んだリリアがむくれている。むくれても可愛い。
「私、魔法をもっともっと勉強します。きっとそちらの世界と自由に行き来できる方法を、見つけますわ。ですから」
リリアが塩田の前へと進む。塩田がちょっと怯んだ。
「今度会えたら、そちらの世界を案内してくださいませ」
微笑んだリリアの目から涙がこぼれ、声は震えていた。
『……それは到底無理ですわ』
「む、ババリアーナの意地悪」
『私がいなくては、ですわ』
「おーいリリア、ババリアーナが手伝ってくれるってよ」
リリアが驚いてこちらを見た。ババリアーナが勝手に言うなんて!と怒ってる。こいつら可愛いな。
「…できたらな!できるもんなら、やってみろ」
「約束ですよ?シオダさんのお部屋、見たいです!」
塩田がそっぽをむいたまま言うと、リリアは目をきらきらさせて微笑む。そんな二人の間をペネロペ嬢が割って入ってきた。
「はいはい、集合写真を撮りますので、皆様並んでくださいませ。あとこれは号外に使いますので、ご了承を」
「おい、俺たちが転移してきたとか書くんじゃねーぞ!?」
塩田ってマジで常にキレてるけど、健康診断毎年引っかかってるんじゃないかな。そこだけ心配。




