破ったのは馬場ですね
目を開けると、魔法陣の描かれた石造りの天井が見えた。…ババリアーナは?エヴァンは?
ふと、私を心配そうに覗き込んでいたアガーテ先生と目があった。
「ババリアーナ…!目を覚ましたのね」
「…アガーテ先生、います、ババリアーナがここに。先生との約束破って、ごめんなさいって」
「…闇魔法を使うなって言ったものね、いいのよ。破ったのは貴女ではないわ」
そうですね、破ったのは馬場ですね。
エヴァンが中になんかいる!気持ち悪ぃ!って暴れている。どうやらちゃんと本物が目を覚ましてくれたようだ。
ババリアーナの肉体の中に、ババリアーナと私がいる。変なの、見てるものは同じなのに、感じた気持ちが二つある感じ。
そしてババリアーナが何を考えて、どんな気持ちなのかが伝わってくる。きっと彼女も同じなんだろう。
「魂の転送には、まず元いた世界と場所の詳しい記憶が必要よ」
「…私、そういえば、記憶が」
「そういえば俺も…元の世界で何をしてたのか、思い出せねえ」
「まあ、きっと二人とも、闇魔法の使い手に関する記憶を消されてしまったのね」
……違う、それだけじゃない。
もっと大事な何かまで、すっぽり抜けてしまっている。何で?
『私のせいですわ、きっと』
「なんて?ババリアーナ」
『眠らされる瞬間、私かなり抵抗しましたもの。同じ闇魔法の使い手として負けたくなくて。きっとその反動ね』
「怖いよババリアーナ」
お前根っからの負けず嫌いかい。
アガーテ先生がやれやれ、という風に口を開いた。
「先に記憶を取り戻さなくちゃいけないようね、ババリアーナ。…出来るわね?」
「記憶…無理に今戻さなくても」
「あ?なんか問題でもあんのか?ローワンの野郎」
「いや…」
ローワン先生の様子がおかしい。そういえば、ローワン先生は元の世界ではどこの誰だったのかしら。
闇魔法は失敗すると自分が呪われてしまうからね、と恐ろしいことをアガーテ先生に言われ、ゆっくり一つ一つ、呪文を唱える。
「……魂の記憶よ、甦れ」
記憶って脳みそに紐づいてるんじゃないのかな。魂にどうやって記憶を搭載するんだ、などと訳のわからないことを考える。




