私は私が信じられないのですが
「すすすみません……私が不甲斐ないばっかりに、ご迷惑おかけして」
「黙ってたのかよバカヤロウ!ひた隠しにしてた俺らがバカみたいじゃねーか!?」
「一応先生の立場だから、周りが混乱すると思って……」
エヴァンを宥めるべきか言葉遣いを叱るべきか悩んでいると、アガーテ先生が呟いた。
「…元のババリアーナたちは、今どこにいるのかしら。無事だといいんだけれど」
「それなら、彼らの肉体の中に眠っていると思いますよ。俺の中に本物のローワンがいますから」
ローワン先生の発言に誰もが驚く。……ババリアーナ、私の中にいるの!?
「授業などは元のローワンの知識がなければ、とても無理でした。恐らく『魂の召喚』の時に眠る魔法をかけられたのでしょう。ローワンは魂に防御魔法をかけていましたから」
ーーいつかの時。水晶で心を覗こうとして、弾かれた。あれは本物のローワン先生のかけた魔法だったんだ。
「じゃあ、目を覚ます魔法をかければ、起きてくれるの?」
「やってみる価値はあるな」
「魂への干渉、闇魔法の一つですね。目覚めてもらってから、……これも禁忌ではありますが、『魂の転送』をしましょう。ババリアーナ、やってもらえるわね?」
「わ、私ですか!?時間を三秒しか止められない私が!?」
「お前しかいないんだろ?やるしかねーだろ」
エヴァンが肩を叩く。皆何当たり前に、成功すると信じて私に頼むんだよ。三人分の命だよ!?怖すぎるよ。
ローワン先生にお返ししたはずの禁書をまた渡される。アガーテ先生と二人で該当魔法のページを探す。
「…多分これだわ、『魂の覚醒』。魔法陣は私が描きましょう」
「先生、もしも失敗したら……」
「大丈夫、自分を信じなさい。きっとババリアーナが何とかしてくれるわ」
「…私は私が信じられないのですが…」
「じゃあ、貴女を信じている皆を信じなさい」
アガーテ先生が微笑む。…ほんとだな、皆を信じるからな。恨むなよ。
私たちは魔法課棟の実習室まで移動した。アガーテ先生が立ち入り禁止、とドアに封印の魔法を仕掛けた。
魔法陣の上にエヴァンが横たわる。私は震える声で慎重に呪文を唱えた。
みーちゃんは危ないのでアガーテ先生に預けた。ぐーちゃんはクラウゼン先生に懐いていた。飼い主の好みが分かるんだろうか。
「目覚めよ、エヴァン・グレイフォードの魂。ババリアーナ・フォン・バーバリアの魂……」
私はそこで意識が朦朧として、誰かに支えられたまま眠りに落ちた。




