星灯祭 十一
ーー最悪のシナリオは防げた、私の魔法、ちゃんと役に立った。まだ脚が震えてるけれども、冷静さは失ってない、はず。
「ーー馬場!」
「ババリアーナ!」
エヴァンとローワン先生の声で振り返ると、目の前に大きな石塊が迫っていた。
ーー死んだ。どちらにしろ死ぬのか。
ごめんババリアーナ、守れなかったーー!
その瞬間、何かが弾けるような音がした。
「わん!」(我、成せり)
恐る恐る目を開ける。…痛くない。生きてる。なんか知らんが石の塊が落ちてる。
「みーちゃん…?もしかして、みーちゃんの力?」
頭の上のみーちゃんを下ろして見つめる。みーちゃんは全身の毛が逆立って興奮状態だった。ごんぶとの尻尾はまるでタヌキのようだ。
「てめェ!消し炭にしてやる!」
エヴァンの怒りが炸裂し、石の飛んできた方向へ真っ直ぐ炎の球が飛んでゆく。
しかし犯人はもう逃げた後だったらしく、地面に当たって炎は虚しく弾けた。
『…すわ』
ぐーちゃんが地面で両手を合わせている。何だ?何をしてるんだ?
一瞬の静かさの後、皆が体を起こし、口を開いた。
「…闇魔法だ」
「ババリアーナ嬢が、闇属性…?」
「そんな、王妃候補のババリアーナ様が…」
「さっきの変な音も、ババリアーナ嬢が…?」
ーー来た。
何度も夢に見た、何度もシミュレーションした光景。覚悟は出来てただろ、私。
なのにこのざわめきが、私の心を絡め取っていくような、足元が崩れ落ちていくような感覚を生み出していく。
…大丈夫、誰も信じてくれなくても、あの人だけは一緒に逃げてくれるって言ったから。
その言葉があれば、私は立っていられる。
「うるせえよ」
低い声が響いた。エヴァンだ。
「てめーら何見てたんだよ!ババリアーナはてめーらを守ったんだよ!!絶対禁忌の魔法を使って!」
ーーエヴァン、やめろよ。泣いちゃうだろ。
「はい、新聞部からも一言よろしいですか?ここ数週間の新聞をご覧の方はご存知の通り、ババリアーナ嬢は星灯祭の準備にモチと豆作り、ティーパーティ開催に尽力されていました。よってこのような工作を行うのは不可能かと思われます」
ペネロペ嬢だ。こんなことまで頼んでなかったのに。




