星灯祭 十
王立ノルト学園のど真ん中にある大きな噴水。その周りにたくさんの人が並び、かつてないほどに厳重な警備が敷かれている。
最前列にいるのは先生方と神官の人たち。その後ろに王族、噴水を挟んで反対側に私たち王妃候補の令嬢が並んでいる。
中央はリリア嬢、隣にはオフィーリア嬢。…この子も王妃候補だったのか。
アガーテ先生が杖を振り、長く荘厳な呪文を唱えると、空中に青く光る魔法陣が現れ、そこから大きな水晶のような、細長い結晶が姿を現した。
「……あれが……結界石……」
この学園は結界石を囲むようにして建てられたと授業で習った。普段は姿を隠しているが、見えないだけで確かに存在し、学園のみならず、この王国を守っている。
神官が祈りを捧げた後、リリアとアルフォンス王子は一歩前に出て、一礼をした。白いドレスに身を包んだリリアはまるで、空から遣わされた女神のようだった。
リリアが杖を振ると、杖の端からきらきらと光の粉が飛ぶ。
私は息を飲んだ。エヴァンが言っていたことが当たっているなら、この後魔法が暴発して大変な惨事になる。
光魔法は結界石に吸い込まれるようにして消えていき、その度結界石は淡く光る。
ーー大丈夫だ、反転魔法はかけられていない。
大きく息を吐く。だけれどまだだ、警戒を緩めてはならない。
続いてアルフォンス王子が杖を振る。その杖に灯るまばゆい光は、光の粉を集め、静かに結界石に溶けていった。
結界石は次第に輝きの強さを増してゆき、光魔法で満たされていくのが分かった。結界石が太陽のごとく眩しい光を放つと、リリアと王子は魔法を止め、リリアだけが後ろへと下がった。
王子は振り返り、空中に向かって静かに杖を振る。ひとつ、ふたつ。振るたびに夕空にランプが吊るされているように、灯りがともる。それは幻想的な光景だった。
その時、何かが音を立てて割れたような、変な音がした。
「……陛下!」
騎士たちが国王陛下の元へ向かう。次々にバチン、バチンと光が弾け、地上へと落ちていく。
……反転魔法!?結界石ではなく、空中に仕掛けられた!?
噴水の向こう側、ローワン先生の叫ぶ声が聞こえる。
「ーーー馬場、使え!!!」
私は躊躇なく杖を振る。
「闇魔法、時間よ止まれ!」
光が奇妙な形で空中で停止した。先生、三秒しか持たないの、助けて!
「ーー上出来だ。防護魔法結界!」
ローワン先生の杖から、半球状の透明な障壁が空に向かって広がる。とんでもない大きさのそれは、動き出した光をことごとく弾き、その衝撃とすさまじい音に皆が耳を塞ぎ体を丸めた。




