星灯祭 八
カイル王子がドアを開けると、アルフォンス王子が部屋の前に立っていた。
「やあアルフォンス、どうぞ中へ」
「取り込み中すまないカイル、少しババリアーナと話がしたいんだ。しばらく二人にしてもらっても構わないかい?」
「いいけど、それなら僕が席を外そうか?」
「いや、構わない。少し中庭でも散歩させてもらうよ」
アルフォンス王子の微笑みはいつも通り眩しく、でも心なしか元気がないように見えた。
「あの、どうしてここが…?」
「色々な人に聞いて回っていたら、カイルと一緒にいたって教えてくれたんだ。カイルは目立つから」
アルフォンス王子が笑う。確かにカイル王子は目立つが、貴方も大概ですよなんて言えない、口が裂けても言えない。まるで太陽と月のように正反対な二人だ。
アルフォンス王子と中庭に出る。貝殻の装飾が施された噴水に、美しく手入れされた薔薇の花壇。ベンチへと促されて腰掛ける。
「…僕たちは幼い時から毎年星灯祭に出ているから、すっかり慣れてしまったね。物心ついた時にはもう、ババリアーナが『私は未来の王妃ですから』って言って、いつも僕の手を引いてくれていたね」
「そ、そうだったかしら…昔のことであまり覚えていませんわ」
アルフォンス王子が悲しげに微笑む。私はどう対処したらいいんだ、これ。
「…そんなわけ、ないじゃないか。僕がもしもババリアーナが王妃になったら、という話をするたび、決まって君はこう言うんだ。『私が王妃に相応しいかどうか、よく見極めてくださいませ。周りに流されてはなりません』と。一度たりとも君は、自分が王妃になった時の話をしたことがない」
その言葉を聞いて、違和感が強くなる。ババリアーナは本当に、皆が言うような高圧的で自分勝手な、嫌われ者の令嬢だったのだろうか?
「僕たちは幼馴染だ。僕は小さい頃からずっと君を見てきて、喋り方のくせやよくする仕草まで覚えている。……君は、誰なんだ?」
心臓が変な音を立てる。アルフォンス王子に気付かれてしまった、私はどうしたらいい?
全て話してしまおうか、でも果たして信じてもらえるだろうか?
「…仰る通り、私はババリアーナではありません。でも、私が誰なのか、今は話せません。今は、ババリアーナの体を守ることが最優先なのです、星灯祭が終わるまで、お待ちいただけませんか?必ず、本物のババリアーナを探してみせますわ」
アルフォンス王子の目が大きく見開かれる。信じられない、という顔つきに変わる。何か言いたいが、混乱のあまり言葉にならないようだ。
「…話しているところを失礼、やっと見つけたぞババリアーナ」
声のする方を見る。いつものように鎧を身につけたローワン先生が立っていた。




