星灯祭 六
魔法課棟に移動すると、普通の教室の四倍はありそうな、石造りの広い部屋に案内された。
高い天井にも床にも魔法陣が刻まれ、壁側の本棚には分厚い本と小瓶、薬草が並べられている。
「実習室だ、ここならやりやすい」
危ないから、と部屋の隅に下がらされる。部屋の中央に立つノエルさんの杖に光が灯る。ノエルさんが杖を振ると、そこから光る蝶が飛び出してきた。さっき子供たちが大喜びしていた魔法だ。
ノエルさんが杖をもう一振りすると、蝶が空中に広がって星に変わり、小さなプラネタリウムのようになった。
流れ落ちる星は小さな妖精に姿を変え、輪になってダンスを踊っている。
「すごい…綺麗」
昨晩見た星灯花を思い出す。元の世界では絶対に見られない光景だ。
「…この魔法は何の役にも立たないが、美しいだろう。これも魔法の一つの在り方だ」
「そんなことないですわ、見る人の心が潤います」
「これから先、魔法は生活を支えるものから、生活を豊かにするものに変わると思う。…君とだったら、私の理想の未来を叶えられるかもしれないな」
薄いブルーの瞳が、魔法の光で輝いて、とても綺麗だと思った。その手が私の頬に触れて、思わず怯む。
「秀才くん、僕のレディから手を離してくれるかな?」
…その甘ったるい言い回し、チャラチャラ効果音が聞こえてきそうだぜ。
「…カイル王子」
「ババリアーナ、今日は一日僕と一緒に過ごしてくれるかい?」
返事をする間もなく、また腕を引っ張られて進んでいく。そろそろ腕が痛くなってきた。
「カイル王子…先ほど女子生徒たちに囲まれていませんでした?」
「美しい令嬢を見ると声をかけずにはいられないんだ。妬いてるのかい?」
「いえ全く」
カイル王子が声を上げて笑う。
「一緒に過ごそうと決めたのは、ババリアーナだけだよ」
「私に断りもなく決めないでくださいませ」
「いいね、そういう悪役令嬢らしく、強気なところが好きだよ」
軽々しく好きなんて言わないで欲しい、これだからモテる人は。鼓動が速いのなんて気のせいだ。しっかりしろ、私。




