星灯祭 五
「セシルさん!?あの、どこへ…?」
「音楽室」
「あの…デートっていうのは、いつもの詩的表現ですわよね?セシルさんがお慕いしているのはリリア嬢…」
「僕が君をデートに誘ったら、おかしい?」
振り返ったその顔は明らかにむっとしていた。怒っても綺麗なお顔。
陶器のような白い肌に、ふわりと巻いた美しい琥珀色の髪、絵画から抜け出してきた天使みたいな姿の青年だ。
「…君、オフィーリア嬢の歌の時、泣いたでしょ」
「えっご覧になってたんですの!?」
「君となら音楽の話ができると思ったんだ」
本館の階段を登り、音楽室へ。そこにはピアノをはじめ、沢山の楽器が並べられている。セシルさんは真っ直ぐピアノへ向かい、椅子に腰掛けた。
白く長い指先が鍵盤を叩く。リズミカルに、激しく、時に優しく滑らかに。楽譜もないのに何でこんな演奏が出来るのだろう。
音が振動となって私の体に伝わる。セシルさんが音に乗せて伝えたい想いが、何故か分かる気がした。
演奏が終わり、息を切らしたセシルさんに私は手が痛くなるほどの拍手を贈った。
「…素晴らしいですわ、お聴かせくださりありがとうございます」
セシルさんはこちらを見ると、薄茶色の目を細めて笑った。いつも無表情なセシルさんしか見ていないから、思わずドキッとする。
「あの、セシルさん…
「君は気に入った令嬢にいつも自分の演奏を聴かせるな。行動が単純だ」
その棘のある物言い、背筋が伸びるような声色。ーーノエルさんだ。
「ババリアーナ嬢、ついてきたまえ」
ノエルさんに腕を引かれ、校舎の中をどんどん歩いていく。今日は何なんだよ一体。
「ノエルさん、私また何か怒られるようなことしてしまったでしょうか」
「そうじゃない、今日は星灯祭だ。特別な日に特別な人を誘って何が悪い?」
ーーは。
意味が分からずノエルさんの顔を見ると、照れたように目を逸らされる。
「この国の発展と魔法は切っても切れない関係だ。闇に灯りを灯すのも、肉に火を通すのも魔法の力だ」
「そのようですわね…?」
「だが、使える魔法は個人差が大きい。私は、誰もが自由に魔法を使える未来を実現させたいんだ」




