前夜祭 二
星灯大広間は、年に数度しか解放されないらしい。
星灯祭のためにあると言っても過言ではない、豪華絢爛な舞踏会場は、吹き抜けの真ん中に吊るされている大きなシャンデリアと、ステンドグラスに彩られている。
フロアには磨き上げられた木の床、ここがダンス会場となる。二階からフロアへ続く大階段が設けられており、令嬢たちはそこからフロアへ降りてくる。
ーーとミラベルさんに教わった。
明かりが落とされたフロアで令息たちが待つ中、私たちは控室で出番を待つのだ。トップバッターはリリア、大トリは私。
「ババリアーナ様、私、参りますわね」
水色のレースやリボンをあしらった真っ白なドレスは、リリアの透き通った肌や淡い金の髪によく似合っている。出会った頃のか弱く繊細な印象とは違い、明るく堂々とした令嬢になっていた。これが本来のリリア嬢なんだろう。
「いってらっしゃいませ、楽しんでね」
笑顔でお辞儀を返すリリアを見送り、一人、また一人と令嬢が扉から出ていく。皆が色とりどりの花のように綺麗で、フロアに令嬢たちが並ぶ様子は壮観だろうなと思う。
「ババリアーナ様、どうぞ」
名を呼ばれ、扉へ向かう。私一人が子豚で残念だなとは思うが、せめて転けないよう、ミラベルさんやバーバリア家の恥とならぬよう、堂々と歩かねば。
扉を抜けると、目の前に照らされた階段がある。フロアは幸い暗くてよく見えない、これなら人の目もさほど気にならない。
それでも、壁際に立つ背の高い、赤茶色の髪の毛の騎士だけは目に入ってしまったけれど。
私がいるから、きっと令嬢たちが引き立つ。令息たち、令嬢たちの美しさにびっくりするといいよ。そんなことを考えたら楽しくなってきた。
最後の一段を降り、くるりと回って正面扉の反対の楽団へ向き直る。演奏がぴたりと止んだ。
「開会に先立ちまして、ローゼンクロイツ侯爵家ご令嬢、オフィーリア様より祝福の歌をお贈りいただきます」
毎年一人令嬢が代表して歌を披露すると聞いて、私はひそかにワクワクしていた。予行演習では省略されていたので、ちゃんと聞くのはこれが初めてだった。




