前夜祭 一
横たわる二人、その体は白く冷たい。
その目は二度と開くことがない。それを悲しみ嘆くより、誰も彼もに責め立てられることを私は恐れていた。
『やっぱり計算で仲良いフリをしていただけなのですね、こんな時涙も流さないなんて』
『悪役令嬢の名がお似合いだ』
『断罪せよ』
『断罪せよ』
『断罪せよ』
アガーテ先生、クラウゼン先生、皆の目が私を軽蔑し疎んじる目だった。
手を差し伸べてくれる人なんていない、だって私はこの国の宝である王子と、王妃候補の命を奪ってしまったのだから。
『死んで償え、悪役令嬢』
エヴァンの目が憎悪に染まっている。
身動きが取れない私の首を刎ねるのは誰だろう。
ーーーそんな夢を、今日まで何度繰り返し見ただろう。
枕元でみーちゃんは丸くなり、足元でぐーちゃんが伸びている。
二匹を起こさないように、そっとベッドから抜け出し、窓際へ行く。カーテンから薄明かりが漏れ、窓の外を覗くと、陽が登る前の静かな水色の空が広がっていた。
特別な日って、いつも容赦なくやってくるよな。こっちは心の準備なんかできてないのに。終わった後のことなんて想像できない、それでも四十八時間後には、確実に全てが終わっている。その時私は無事かどうか分からんけど。
「ババリアーナ様!今日は前夜祭ですよ!!起きてください!」
「ふぁい」
…二度寝して見事に寝坊した。身体も重たいし最悪だ。
朝からぐーちゃんはみーちゃんにちょっかいを出し、『生意気な若造め』と言わんばかりに威嚇されていた。
私の頭は寝癖で大変なことになっており、ミラベルさんがブラシが通らない!と金切り声をあげていた。
「ババリアーナ様、覇気がありませんわ。今日の主役は貴女なのですよ?世界で一番美しい令嬢として、胸を張っていってらっしゃいませ」
「馬子にも衣装っていうしね」
「またよく分からないことを仰って…もう、自信持ってくださいませ!殿方たちがお待ちですわよ」
「ミラベルさん、あれからカイル王子とお話した?」
「な、な……」
ミラベルさんが真っ赤になって黙ってしまった。こりゃあアレだな。そう思ったけど黙っておいた。
恋する乙女ってやつは、いつの時代も、どこの世界でも可愛いねぇ。




