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いつものうっかりですわ

天蓋つきのベッドで寝るなんて初めてだ。

誰も彼もが私を「ババリアーナ」と呼ぶ、発言に矛盾がない。そしてお菓子の味が知っているようで食べたことのない味だった。

やっぱりここは日本ではないのだ。私の知ってる中世ヨーロッパと似ているようで、大分違う。

元の私は?日本の皆は?仕事は?これからどうなる?


「…やめよ」


考えると気が狂いそうになる。

楽しいことを考えよう、そうだ、今日会ったおじさま、格好良かったな。『ローワン』さんだっけ。なんであの人私のこと「馬場」って呼んだんだろ。明日聞けたらいいなぁ。


「ババリアーナ様、朝ですわ」


メイドさんが勢いよくカーテンを開け、視界が一気に眩しくなる。かーちゃんに起こされてるみたいだ。


「おはようメイドさん、あの、お名前聞いても?」

「…ああ、やっぱり記憶が戻ってらっしゃらないのね。ミラベルですわ」

メイドさん改めミラベルさんは少し悲しそうな顔をした。私は記憶喪失扱いなのだ。

「ミラベルさん、暫く不便かけますが記憶が戻るまで色々教えてくださいます?」

「勿論ですわ、何度だってババリアーナ様を学園一のご令嬢に育て上げてみせますわ」


ミラベルさんは強気に言い放つ。この人敏腕メイドさんだったんだろうな。


教室に入ると一瞬しん…となる。私が腰掛けるまで誰も何も喋らない、気まずい。


「あ、あの…昨日はお騒がせしてすみませんでした、わ」


今度は一気にざわつく。何だ何だババリアーナ人気者じゃねーか。


「ババリアーナ様、あの、記憶を失ったって本当ですか?」

「噴水に落ちたというのは」

「あ、あら、ご覧になっていたのね…あれはその、いつものうっかりですわ」

「「いつもの!?」」


私また失言したっぽいな。ババリアーナはどういう人物だったのかヒアリングしとかないとまずい。


「あの、噴水に落ちたショックで、ちょっと記憶に混乱が見られるみたいで…色々教えてくださると助かります、わ」


その時教室のドアが開いて、大柄の男性が入ってくるのが目に飛び込んできた。

ーーーまさかのローワンさん。


「ババリアーナ嬢、体調は問題ないか?」

「はっ、はい!」

「蜂からババリアーナ嬢を助けようとして、彼女は慌てて噴水に落ちたんだ。驚かしてしまい本当にすまなかった」

「よしてください、私が勝手に逃げようとして…」

「俺の二の舞にならないために、皆護衛を学ぶんだぞ」


ローワンさんが手に持っていた教科書には『護衛術』の文字が。なるほど。

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