私、ババリアーナじゃないもの
優雅にクッキーやらマドレーヌやらをいただきながらメイドさんの話を延々聞き続ける。
「メイドさんも座って食べたら?」
「な、な…食べません!た、立ち話はいささか疲れましたので座らせてはいただきます!けれども!」
「それでどこまで聞いたかしら、ちょっと固有名詞が多くなってきたので、メモさせていただいても?」
「どうぞお好きになさって下さい。こほん、今年は選定試験を行わず、星灯の乙女が決まった、というところまでですわ。リリア様が光魔法を使える逸材だったからです」
「リリア」
「正式にはリリア・エルシア・ルミエール様。平民出身とのことですが、その頭脳、魔力の高さ、何より王族しか使えないはずの光魔法を使えること、ノルト学園内でババリアーナ様に次いで注目されている…今の時期ならひょっとしてババリアーナ様よりも注目を集めているご令嬢、ですわ」
「ほうほう」
アルフォンス王太子殿下のお願いは、『リリアにきつく当たらないでくれ』ときた。つまり?
「ババリアーナ、星灯の乙女の筆頭候補だったの?」
「勿論ですとも、お嬢様の家柄、成績、魔法の技術、美貌。どれを取っても他のどんな女学生に引けを取りません。リリア様が現れたのは不運でしたが、ババリアーナ様はリリア様に礼儀作法を少しきつめに指導しただけのこと、ですわ」
「学園一の誉れ、王妃候補、なるほど…その座をリリアに奪われると思った訳か」
「ババリアーナ様、さっきから何故他人事ですの!?」
「だって私ババリアーナじゃないもの」
「は」
「私働いてたし、普通の平民の生まれだし、魔法なんて使えないし。名前馬場だし」
メイドさんが震え出した。怒鳴られるかな、泣かれるかな。などと思っていたら倒れてしまった。
「え、ちょっ!しっかり、メイドさーん!!」
メイドさんをベッドに運びながら考える。私が『ババリアーナ』として振る舞わないと、混乱が生じるのかも知れない。それは何だかよくない気がする。




