他人のものは私のもの
詰所の扉をノックすれば、からんころんとベルの音と共に、呆れ顔のローワン先生。
「……俺のところで悪事は止めろよ?」
「せんせー!前頂いた、珍しい茶葉ありますこと?」
「顔に寄越せって書いてあるな…」
悪役令嬢の極意その三、他人のものは私のもの。
「俺の貴重な楽しみが…」
「大丈夫ですわ、先生の分もお作りしますので」
ローワン先生のお顔に「?」が浮かぶ。この人結構感情が顔に出る。可愛い。
分けていただいた茶葉を金属製の薄い鍋に入れ、火にかける。じっくり炒ること数分。
「おい、何をしている」
「火加減が難しいです!あちち」
「危ないだろ」
鍋を取り出そうとして先生に止められた。代わりに先生が鍋を取り出してくれた。
よく炒られた(ちょっと焦げた)葉をそのままティーポットに入れ、勝手にお湯を注ぐ。そうしてできたお茶を先生に差し出した。
先生は完全に私をイカれた奴を見る目で見ていたが、観念したのかカップに口をつけた。
一口、二口。一息ついて首を振り、続きをごくごく飲む様を私は見守っていた。
「…思ったより美味いな」
「ほうじ茶って言うんですよ」
私もちょっと冷めたそいつを飲んだ。随分雑な味がするけれど、ちゃんとほうじ茶だ。
「これをティーパーティで出したい!」
「茶葉は分けないぞ」
「先手を打たないでくださいまし」
残念。カイル王子がなんか珍しい茶葉とか豆とか持ってないかな。ああ蕎麦茶も飲みたくなってきた。
「……せんせー、私。エヴァンを見てて思いましたの。私もどうしても負けたくない人がいた気がするのです」
「そうか」
「何をどうやっても勝てなくて、悔しくて、少しだけエヴァンの気持ちがわかる気がするのですわ」
「本人に言ってやれ」
「嫌ですぅー」
こんなこと話せるのは、ローワン先生だけなんだっていうのは内緒。




