悪事の最初の一歩ですわ
豆を煮ている鍋に砂糖をどかどか入れると、生徒たちから短い悲鳴があがった。この国にはない調理方法らしい。
そして臼と杵なんてあるはずもないので、でかい鍋とハンマーで餅つきしてもらった。気付けばギャラリーが増えて人数が倍ぐらいになっていた。
「……できましたわ!餅」
皆が白くて丸い物体を凝視する。皆の前であんこに似せた豆のペーストをつけて、食べてみせる。
「……餅だぁ」
「寄越せ」
エヴァンが切り分けた餅をぶんどっていく。思ったより硬かったらしく苦戦していたが、静かに食べていた。
その様子を見て、見守っていた生徒さんたちが次々餅を取っていく。皆不思議そうな顔をしていたが、ちらほら『おいし』『意外といける』って声が聞こえた。
甘い物好きなリリアの目にお星様が生まれていたのを私は見逃さなかったぞ。ついでに『よく噛め、詰まるから』って声かけたエヴァンも。
「君、面白いことをするね」
「民を手懐けるのが悪事の最初の一歩ですわ」
「悪役令嬢、『モチ』を作る……生徒懐柔作戦か?と……」
後ろからがりがりとペンを走らせる音が聞こえたものだから、チャラ王子……カイルと目が合って笑ってしまった。
「交易の恩恵がこんな形で現れるとはね」
「カイル王子、小豆は取り扱ってませんの?」
「アズキ?」
「赤紫の小さな豆ですわ」
「ああ、あったかもしれないな」
「よこ……くださいまし」
「まさか無償で!?」
「種をほんの少しでいいですわ。甘い物が大好きなリリア嬢の笑顔、見たくないですか?」
カイル王子が苦笑いをする。弱みを握られたと思ってるのだろう。ふふ、私の悪役っぷりを見たかチャラ王子。




