もっと頑張れよ悪役令嬢
「どういうこと!?カイル、王子なんて一言も…」
「これは失礼、アズィール王国の第一王子、カイル・アズィールと申します。リリア・エルシア・ルミエール嬢」
恭しいお辞儀に女子生徒から歓声が上がる。その瞳は金色で、いくつもの耳飾りがきらきらと輝いている。民族衣装みたいな服にも装飾がたくさん施され、動くたびにしゃらりと鳴る。
背もすらっと高く、声はハスキー。異国の香りが漂い、危うい雰囲気を醸し出す。
「黙ってたのね!もう、……今日は何をしにこの学園へ来たの?」
「もちろんリリアに会うため……だったら良かったのだけど、外交留学さ。我が国にはない結界石、それを祀る星灯祭。実に興味深い、我が国の政治に役立つと思ってね」
ウインクしてみせた異国王子に、多分何人かの女子生徒が恋に落ちたことであろう。エヴァンが苛々を隠せず足で床を叩き出した。
「制作段階で何とかすりゃ良かったのに……」
「俺はキャラデザはやってねえよ!俺の担当はプログラミング!」
「敵が多いねえ….仕方ないね乙女ゲーのヒロインだもんね」
「うるせえもっと頑張れよ悪役令嬢!!」
すると異国王子がこちらへやってきた。何だ何だ、噂話が聞こえちゃったか!?
「……君は名のある令嬢だね?気品と威厳を感じるよ」
「カイル!!ババリアーナ様に失礼なことしないで!」
異国王子は私の前にひざまずき、私の手を取り口付けをした。その瞬間悲鳴があがる。
私はたった今コイツを心の中で『チャラ男』と呼ぶことに決めた。
「名前を教えてもらえるかな?美しい令嬢」
「ババリアーナ・フォン・バーバリアと申しますわ。この学園では悪役令嬢と呼ばれておりますの」
「ほう……?面白いことを言うね、見た目通りミステリアスな令嬢だ」
隣でエヴァンが爆笑していて非常に腹が立つ。このお腹の中に隠れてるのは秘密ではない。ただの脂肪だ。
「リリア嬢に会いに来たのではなくて?ぼんやりしておりますと、他の殿方に掻っ攫われてしまいますわよ。リリア嬢の魅力は計り知れないですから」
「忠告ありがとう、どんな相手が敵であろうとも譲るつもりはないよ。僕が見つけた宝石だからね」
エヴァンが笑い過ぎて息ができなくなってるようなので頭をしばいておいた。




