バカだからじゃない?
「エヴァンこそ落ち着け、大丈夫だよ。まだ結界石には何も細工はされてないってローワン先生が言ってた。ここから先、私にアリバイがあれば疑われずに済むでしょ?」
「またアイツか!俺はアイツをまだ信用してねぇぞ、どこまで話した!?」
「核心的なことは全部」
「軽率すぎるだろ!!」
エヴァンがもう、焦ってるのか怒ってるのか分からない。血圧が大変なことになってる気がするけど大丈夫かな。
「ローワン先生は、私がババリアーナでないこと、断罪されることを信じてくれたよ。だから大丈夫じゃない?次はリリアにも話してみようよ」
「騙されてるかもしれねぇぞ、裏でお前を捕まえる話をしてっかも……分かんねぇんだぞ」
「じゃあペネロペ嬢に全部記事にしてもらう?」
エヴァンが膝を折り、地面に両手をつく。
「じゃあ、保険として魔法を準備しとこう。エヴァンは属性、何?」
「……炎だけど」
「……ぴったりじゃん」
「保険て何だよ、戦うのか?」
「私がもし囚われたら、魔法で助けて。私は攻撃魔法はさっぱりっぽいので召喚に頼ります」
「タヌキに何が出来るんだよ…」
みーちゃんが唸ってる。人語を理解してるの賢いな。
「もう結界石の話が先生方に伝わっちゃってるなら話は早いな、アガーテ先生んとこ行こう」
「お前、何でそんな前向きっていうか……命知らずなんだよ」
「バカだからじゃない?」
「………」
もちろん自分がバカと認めた訳じゃない、いつもバカバカ言ってくるエヴァンへの皮肉だ。でも先のことをあーだこーだ考えるのが苦手なのも事実で。過ぎちゃったことを悔やんでも仕方ない、今は動くしかない。
魔法課棟は相変わらず不思議な匂いが立ち込めていて、本館とは違い賑やかだ。
あの時とは違う、好奇の目を感じるぞ。あちこちで『悪役令嬢』という単語が漏れ聞こえる。ペネロペ嬢の新聞、いい仕事するじゃん。
「エヴァン、待っててもいいよ」
「いや俺も行く……もうお前を野放しにする方が怖ぇ」
珍しく覇気がない。ごめんね余計な心配かけて。
魔法課教員室のドアをノックする。中から出てきたアガーテ先生は驚かなかった。まるで私たちが来るのが分かっていたように。
「ババリアーナ、話をしましょう。……エヴァン、貴方も一緒に来なさい」
教官室の隣の部屋に案内される。面談などで使用される部屋なのか、小さくて落ち着いた部屋で、内鍵がついていた。
「ここに来たのは、結界石と、貴女の魔法の属性の話をするためね?エヴァン、貴方も知っているのでしょう」
「アガーテ先生、全てお話します……信じてもらえるか、ううん、とても信じられないようなことをお話しますけど」




