我は汝を守護する者ぞ
「じゃあ…これから誰かが…」
「馬場、まだ話してないことがあるだろう?」
ローワン先生の目を見ると、じっと見返される。逸らしたいのに逸らせない、全部見透かされてる目だ。
「私、星灯祭の後に断罪されます。……死にたくないです」
「……なるほど」
この一言だけじゃ意味が分からないだろう。でも先生は否定しなかった。それだけでどんなに救われただろう。
「先生、何も聞かないんですか」
「聞いたところできっと理解できない、そういう次元の話だ。分かってるのは、お前はババリアーナではなく馬場で、自分が断罪されることを知っていること。それだけだ」
……この人は、なんて賢い人なんだろう。自分の手に負えないことを突き放したりしない。無理やり自分の中に落とし込んだりしない。
「……騎士ローワン・ヴァルツの名において、ここに誓おう。俺は何があっても馬場を守る」
「…っ、守るものが間違ってます!守るのは、リリア嬢とアルフォンス王子ですわ!」
「何も間違ってない、二人はお前が守れ。俺はお前が疎かにしているお前自身を守る」
「ぅなん!」
みーちゃんの背後に『我は汝を守護する者ぞ』って文字が見える。
……私が疎かにしている私?私、疎かにしてるかな?
「ここまでよく頑張ったな、馬場。もう大丈夫だ」
たった一言で、こんなに心に響くこと、ある?
こんなに嬉しくて心強くて、なのに泣けて泣けて仕方ないこと、ある?
ひたすら泣いた。みーちゃんはしっぽで私の頬を叩いた。ローワン先生はずっと抱きしめてくれていた。
…気づかないフリをしていたの。
悲しかったこと、寂しかったこと、心細かったこと。だけどそれはきっとエヴァンも同じ。
だから二人笑ってふざけていられた。
大人だって泣きたいよ。そういう日があってもいいよ。




