冷めてしまいますわね
「…っせえなババリアーナ!」
「どうしたんでしょう、やっぱり様子を見に行きましょうか」
「どうせ変なモノ召喚したり、変な魔法覚えたりしてんだろーよ!呼び出しておいて遅刻とはいい度胸じゃねぇか」
「…マドレーヌ、冷めてしまいますわね」
「……寄越せ」
「えっ」
「このまま待って冷めちまうぐらいなら食うってんだよ!寄越せ!」
「は、はい」
どうしよう。何も考えずエヴァンに話そうと思って、待ち合わせの薔薇園まで来てしまったけれど、薔薇の影から出られない。リリア嬢にはまだ言えない。そう、誰にも言えない。
両手のひらを見つめる。……まさかババリアーナが、闇属性だったなんて。
ローワン先生が言ってた、闇魔法を使えるというだけで、犯人はかなり絞られるって。それだけ希少な存在なんだ。
……それなら、やっぱりババリアーナが犯人じゃないの?私が転生する前に、もう魔法を仕掛けてあったとしたら?
ーーー不味いことをした。
今結界石を調べられて、魔法がかけられてあったのが発覚したら、容疑者に上がるのは私だ。
先生方、騎士団、学園長、そこから王家に話がいくのは時間の問題だ。
「…証明しなきゃ、証明しなきゃ……」
私が決して誰かを傷つけようなんて思ってないこと、でも、どうやって?
エヴァンに話したら、何も悪くないエヴァンまで巻き込んでしまわない?
アガーテ先生、クラウゼン先生、私を信頼して下さった方々を裏切ってしまうの?
……逃げなきゃ。誰にも見つからないところに逃げなきゃ。立て直せ、考えろ。
誰も彼もが私を捕らえに来る敵に思えた。気付けば温室のすぐそばの、小さな林の中にいた。
「ぅなん」
「!みーちゃん…やだ、私みーちゃん頭に乗せたままだった…」
みーちゃんを下ろす。みーちゃんは抱っこを嫌がり、また頭に登ろうとしていた。
「みーちゃん、私、どうしよう」
後ろから人の気配がした。大丈夫、何もしなければきっと通り過ぎるだけ。
「…ババリアーナ?」
ローワン先生の声だ。私は咄嗟に立ち上がり、声の方向とは逆の方へ走り出した。




