直球じゃねーかバカ
王太子課程室の授業は、基本的に私とアルフォンス王子しか受けられないらしい。つまり私は真横から太陽に焼かれるのだ。
「どうしたのババリアーナ、ため息ばかりついて」
「いえ…ちょっと緊張してしまって…」
「大丈夫だよ、講師の先生は皆優しいしとても分かりやすいから」
「そ、そうですわね…」
言えない、まさか隣が貴方だから緊張してますなんて。反逆罪で裁かれてしまう。
ドアから入ってきたのは、あの日図書館で会った銀の髪の紳士だった。今日はグレーのベストの上に黒いジャケットを羽織っていて、口元も引き締まっている。図書館での彼を知らなければ、厳しそうな先生だと思っただろう。
「財政の授業を始めますよ」
分厚い辞書のような教科書、細かい文字、数字の羅列だらけ。…何をいってるのか分からぬ。
「どうしましたババリアーナ」
「クラウゼン先生、ババリアーナは一時的に記憶を失っていて…」
「おや、そうでしたか。ああ、だからあの時図書館で」
「図書館…ですか?」
銀の髪の紳士がくっくっと喉の奥で笑う。アルフォンス王子が不思議そうな顔をする。私は恥ずかしさに今すぐ隠れたくなった。
「基礎は大事です、ババリアーナ。どんなに難しい学問も、『何故学ぶのか』を忘れないでくださいね。貴女はこれから多くの人の上に立ち、人の生活を守り導いていく義務がある。その為に知っておく必要があるからですよ」
クラウゼン先生が優しい目でこちらを真っ直ぐ見る。何もかも見透かしたような目だ。私はその期待に応えたい気持ちと、逃げ出したい気持ちで揺れた。
ババリアーナ、あんたすげぇよ。この重圧に耐えて、毎日死ぬほど努力して、それでも嫌われて。いや嫌われるような行動しなきゃいいんだけどさ。
王子から逃げ…もとい王子と別れ、温室に向かう途中の植物園でリリアに会った。
「リリア嬢、ここで会うのは珍しいですわね?」
「あのっ…!ババリアーナ様、お聞きしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」
リリアはうっすら頬を赤く染め、俯いている。私が男だったらうっかりときめいちゃうかも知れないが、それどころではない。
………来たか、フラグ。
「ババリアーナ様、……アルフォンス王太子様のことをどうお思いですか?」
「ヤッタァァァァァ」
「えっ」
「あっすみません何でもありません」
リリアが意味がわからなくて混乱してるじゃないか。でも正直一番嬉しい展開きた。さてどう反応するのが良いだろうか。
「…あの、絶対に誰にも言わないと約束して頂けますか?」
「は、はい…」
「実は私、王子の爽やかっぷりが苦手ですの」
「直球じゃねーかバカ!!!」
りんごの木の下から飛び出してくる不審者にリリアがびくっと肩を震わせる。止めろ細マッチョ令嬢。
「乙女の会話を盗み聞きとはお行儀が悪いですわ」
「うるせえよ大事なとこなんだ!!もう少し慎重に動け!」




