ババアはおよしなさい
教室の前に仁王立ちしている令嬢がいた。
淡いピンクの縦ロール髪に真っ赤な薔薇のカチューシャ、制服のあちこちに黒と赤のリボンをあしらっている。
「……エヴァン、、かな?」
「あ"!?」
眉間に深く刻まれた皺、寄った太めの眉。どこからどう見てもエヴァンだ。
「ぶははははははははは」
「オイ悪役令嬢!!!笑い方が下品なんだよ!」
「ど、どうして!!頭だけ魔法少女ぶはははは」
「うるせぇ!髪を金髪にする魔法をかけたら、こんなになっちまったんだよ!!!!!」
「腹…じゃないお腹が痛いですわ!!!」
何で自分に魔法をかけようと思い立ってしまったんだろうブフッ。駄目だ見るだけで笑いが止まらなくなる。
「エヴァン、後で魔法課教員室へいらっしゃいな。頭のてっぺんからつま先まで、その格好について、たっぷりお話しましょう?」
おばあちゃん先生が笑顔でキレてる。そうだよね校則違反のオンパレードだもんね。
魔法課のおばあちゃん先生は、アガーテ先生と言うらしい。見たとこ先生方の中でも最年長ではないかな。
初日に私を『ババリアーナ・フォン・バーバリア!』って怒ったのもこの先生だ。とっても厳しい、けど私はこの先生が何故か嫌いじゃない。
てゆうか、個人的に魔法こっそり教われないかな。
ーーなどと思い、授業後にこっそり、魔法課教員室に向かってみる。
部屋の中からエヴァンの『うるせえ』『知らん』という反抗的な言葉が聞こえてくる。なんであそこまで堂々としてられるのか、全くもって謎だ。
扉から出てきたエヴァンに驚かれた。
「うお、何だよ…様子見か?」
「いいえ、アガーテ先生に質問がありますの」
「ババアに?変わった奴だな。リリアとかノエルがいるだろ」
「ババアはおよしなさい」
後で温室来いよな、とエヴァンが立ち去る。入れ替わりに私が教員室に入ると、アガーテ先生は水晶に魔法をかけていた。
「失礼いたします。アガーテ先生、ちょっとお聞きしたいことがありまして、お時間をいただけますでしょうか」
「まぁババリアーナ、この部屋に来るのは珍しい…いえ、久しぶりね。いらっしゃい」
先生の机に向かうと、水晶の中に人の姿が見えた。あんまり見てはいけないのかも知れないと思って目を逸らす。
「明日の魔法実習の詳細を送ります。可能な限り予習してきて下さいね」
アガーテ先生は水晶に話しかけると、びっしり文字の書かれた書類を魔法の力で浮かせ、水晶の上に乗せた。
次の瞬間、書類が光って消えた。
「……すごい、魔法ってこんなことまで出来るのですね」
「ああ、貴女まだ記憶が…そうね、これぐらい出来なければ魔法課の先生は務まらないわ」
「今先生は何の魔法を使ったのですか?」
「伝声水晶を使って、紙を生徒に送ったのですよ」
伝声水晶、リリア嬢が言っていたやつだ。




