フィナンシェが二つ、スコーンが一つ
アルフォンス王子自らお皿を並べ、私がお菓子を取り分け、リリア嬢が淹れてくれたお紅茶の入ったティーカップを並べる。
小さなお茶会が始まった。
「ううん、焼きたてはやっぱり美味しいですわ!ババリアーナ様の手作りを頂けるなんて」
「私じゃないですのよ、半分以上メイドのミラベルさんに手伝っていただきましたの…」
「でも本当に美味しいよ、こんな良い香りのスコーンは生まれて初めて食べた」
褒め上手の二人に囲まれて私は蒸発してしまいそうです。両側からの光が眩しすぎる。
「せ、星灯祭の準備は順調ですの?」
「今のところはね、リリア嬢の魔法技術が第一学年とは思えないほどの実力で、本番が楽しみなぐらいだよ」
「そんな…まだまだ学ぶべきところは沢山ございます、一般魔法についてはババリアーナ様の足元にも及びませんわ」
「そんなことございませんわ、私だって半人前ですのよ」
褒められ慣れてなさすぎて辛い。エヴァンのあの歯に衣着せぬ物言いが恋しいぜ。
「リリア様、お好きな食べ物はございます?もし良ければ、またお菓子を作って参りたいのですが…」
「まあ!私、甘いものには目がなくて…タルト、クッキー、ビスケット、マドレーヌ。選べませんわ…」
「リリアはお菓子を見ると目の中に星が生まれるものね」
「そ、そんなこと…!ちょっと、あるかもです」
照れているリリア嬢とちょっと意地悪な笑みを浮かべるアルフォンス王子。ノエルさんが見たら発狂しそうな、お菓子よりも甘ったるい空気。
これは、アレなのでは??
「では沢山の種類のお菓子を焼いて参りますわね、差し入れに伺いますので、王子と二人で召し上がってくださいませ」
「え??ババリアーナ様も一緒がいいですわ、ねえアルフォンス様」
「リリアがそう言うなら、また三人でお茶会しようよ」
「素敵!次は私も何か持って参りますわ」
良いんじゃない?この流れ良いんじゃないの??褒めたまえエヴァン。少なくともリリア嬢の好感度は上がったろ。
そして私はちら、とドアの方へ目をやる。余っているお菓子はフィナンシェが二つ、スコーンが一つ。
「…あの、この余ったお菓子、ローワン先生に差し入れてもよろしいかしら」
「まあ、先生きっと喜びますわ」
「ババリアーナ、優しいんだね」
「いえ、いつもお世話になってますから…」
事実だもん。お世話になるというよりご迷惑をおかけしてるのが正しいかもしれないが。
ドアをゆっくり開ける。蒸し暑い空気が流れ込んできて、どこからか虫の声が聞こえる。この世界にも夏があるんだなあ。ローワン先生が『もう終わったのか?』と声をかけてくれる。
「先生。…これ、良かったら」
「菓子?今は警備中だからいらないよ」
「じゃあ中に入って、少し休みませんこと?」
「そしたら誰がここを警備するんだ」
「わ、私にお任せください!………警備って、何をするんでしょうか」
「授業を聞いてないのか」
頭をぽん、と叩かれ、『ありがとう』と呟かれ。少しだけ笑ったその顔を見ると、私はなんだか胸がぎゅーーっとなるのだ。




