私が邪魔だ!
王太子課程室へそのまま向かうと、既にリリアがいた。電話もメールもない時代にどうやって連絡を取ったんだろう、鳩か?
「王太子殿下、お誘いありがとうございます
。ババリアーナ様もご一緒出来るなんて本当に嬉しいですわ」
「ババリアーナ嬢が自ら僕の寮に足を運んでくれたんだよ、これは是非招待したいなと思って」
「伝声水晶はお使いにならなかったのですか…?」
リリア嬢にきょとんとされる。そして私も多分同じ顔してる。伝声水晶、なんですかそりゃ。
「きっと上手に焼けたから、早く見せたかったんだよ。そうでなきゃリリアと会えるかどうか、分からない時点でバスケットごと持ってこない」
アルフォンス王子が屈託なく笑う。その輝きが私の胃を直撃し思わず顔を逸らす。
「これが光属性…強い」
「ババリアーナ様?どうされました?」
「あっいえちょっと太陽を直視してしまいまして、ただの立ちくらみですわ」
誰か日陰をくれ。私には眩しすぎる。
王太子課程室の巨大な扉の前に、見覚えのある人が立っていた。
「ローワン先生!」
「今日は先生が警備の日なのですね」
……染みる。私の唯一の日陰をありがとう。
「リリア嬢、顔色が随分良くなったようだな。アルフォンス王太子がずっと気にかけていたよ」
「ご心配おかけしましたわ、もうこの通り、大丈夫です。星灯の乙女の役はしっかり務めさせていただきますわ」
「役よりも君の体が大事だよ、どうか無理しないで」
くっ、この二人…光属性同士、お似合いすぎる!!二人だけで世界が完成しておる!私が邪魔だ!!
「悪役令嬢殿も一緒か、珍しいな」
「ロ、ローワン先生!?」
「噴水に落ちたりエヴァン嬢と決闘したり、忙しいな。悪事を働く暇がないな」
「ぎゃぁぁぁぁ!やめてください!」
先生が少し笑う。
……先生があの新聞をご覧になってるなんて。
「噴水?決闘?ババリアーナ様、大丈夫でしたの?」
「心配には及びませんわリリア嬢。さあお菓子が冷めてしまいます、早く召し上がってくださらないとほほほ」
恥ずかしい。一刻も早くローワン先生の視界からいなくなりたい。
王太子課程室。王位継承者、あるいは将来国家の中枢を担う者が学ぶ為の部屋らしい。
国政、外交、その他私達庶民が普段学ぶことのない授業が行われるとか。ちょっと受けてみたい。
部屋の中は大きな円卓に立派な革細工の椅子、壁には歴代国王たちの肖像画がずらり。
「まぁ…会議室のようですのね」
「本当に、どこかの常務が土下座してそうな部屋ですわ」
「ババリアーナ嬢は何度も来ているじゃないか、おかしなことを言う」
「!そうですわ、王妃教育も行われてるんですものね」
そうか、王妃候補か。とんでもねぇ人に転生しちまったなこりゃ。
艶々に磨かれた木製のテーブルにバスケットを置き、蓋を開ける。やっぱ冷めちゃったよなぁーと思っていると。
「ババリアーナ様、お菓子を拝借しますわ」
リリア嬢が懐から杖を取り出し、宙に何かを描く。描いた軌跡は青く光り輝き、不思議な音を立てていた。
バスケットの上が眩しく光り、眩しさに思わず目をつぶる。しばらくすると香ばしい香りが漂い始め、何事かと思って目を開けると。
「光魔法、お菓子を温めるのに便利ですのよ。焼きたてみたいになりますもの」
リリア嬢、案外お茶目。




