ほうじ茶がいいですわ
リリア嬢にお茶菓子を渡したい。だが、おそらく誰かに邪魔されるだろうことは分かっている。ノエルさんとかノエルさんとかだ。
だが私にも考えがある。
王族専用の寮は、私達の寮と少しばかり離れたところにある。アルフォンス王子の部屋ともなれば、警備は厳重だ。だが、ひるんではならない、ババリアーナなら許されるはず。
警備中の騎士様は私を見て一礼する、私も一礼を返し、煌びやかなドアをノックする。
「アルフォンス王太子、ごきげんよう。本日はリリア嬢のことでご相談がありますの、ご都合いかがでしょうか」
中からメイドさんが出てきて入るよう促される。私の部屋と置いてあるものはほぼ一緒。私の部屋よりずっと広いけれど、思ったより質素だ。
執務机の前、大きなソファから王子が立ち上がる。そして私は反射的に胃を押さえる。
「やあババリアーナ、どうぞ座って。飲みたいお茶はあるかい?」
「ほうじ茶がいいですわ」
「ホウ…?」
「なななんでもないですわ、おまかせいたしますわ」
熱い紅茶は胃に染みるんだぜ。ほうじ茶飲みてぇー。
「それで、リリアのことで相談とは?」
持っていたバスケットをテーブルに乗せる。
「私、リリア嬢にお詫びをしたくて、お茶菓子を焼きましたの。けれど、私が直接会いにいっても受け取ってもらえないと思いまして…」
「成程。魔法課の皆、特にノエルは反対するだろうね」
「それで、アルフォンス様と一緒に皆でお茶をすることなら出来るのでは、と思ったのですが…いかがでしょう」
アルフォンス様は少し考え込んだ。よしよしいい反応だぞ。
「いい考えだね、それなら王太子課程室を借りよう。表向きは星灯祭の打ち合わせということにすれば、皆で集まれる」
「あの、それで…他にも人を呼ぶこととかは出来ますの?」
「基本的には王族の関係者しか入れないからなあ」
「…ですわよね」
王子様と密室で長丁場はキツい。逃げ場がない。こんな時こそエヴァンにいて欲しかったーーー。




