私と君はライバルだ
「ミラベルさん、私にお菓子作りを教えてくださいません?」
「まぁお嬢様、気になる殿方でも?」
「どうかしら」
リリア嬢への賄賂だなんて言えない、絶対言えない。この人は優しいんだけど頑固で融通が効かないのだ、オラ段々分かってきたぞ。
次々焼き上がるスコーン、クッキー、フィナンシェ。香ばしい香りがたまらん、ああ美味そう。これ持ってたらローワン先生喜ぶかなぁ、なんて。
「お嬢様顔がにやけていますわ、やはり殿方ですのね」
「へっ!?」
その日も教室の前にエヴァン嬢がいた。ただし仁王立ちではなく、力無く座り込んでいた。
「どうしましたのエヴァン、お腹の具合でも悪いんですの?」
「…これ見ろ」
差し出されたのはくしゃくしゃになった紙。広げてみると…新聞?
見出しは『悪役令嬢、星灯の乙女と和解!?』"ついに改心か、それとも新たな策略かー…"
なるほど。なるほど……?
「待って下さい、なんで悪役令嬢って書かれてるんですの!?」
「俺が何度か叫んじまったから、それを都合よく使われたのかも……」
『私=悪役令嬢』のイメージは非常にまずい。悪は淘汰されるものだ、誰もがそう思ってしまうだろう。
「それにしても、どこの誰がこんな…まあ、新聞部なんてあるんですのね」
「アイツらは異常だ、どこにでも潜んでやがる。あいつらが記事にすることでセーブできる仕組みにしたからな!俺が!」
「おま…貴方のせいじゃないですの!!」
はっと我に返る。今この瞬間もどこかで見ているのでは?エヴァン嬢と慣れ合っているのを怪しまれたら?会話を盗み聞かれたら?
(エヴァン、ここは一つ芝居を打とうぜ。私と君はライバルだ、仲悪くいこう)
(…それが無難だな)
こっそり会話したのち、エヴァンは勢いよく立ち上がった。
「ちくしょぉぉぉぉ!!!悪役令嬢は!俺だ!!俺より目立つなババリアーナ!!!」
「め、目立ちたくて目立ってるんじゃありませんわ!」
「見てろよ、俺の方が悪事をいっぱい働いてやる!!黒板消しを先生の頭にヒットするようにこうしてドアに挟んでやる!!」
「やることがせせこましいですわ」
「うるせぇ!」




