田中とか鈴木出てこないかな
ミラベル、エヴァン、リリア、アルフォンス。カタカナがこれだけ並ぶともう訳が分からない。田中とか鈴木出てこないかな。
…などと思いながらインテリメガネさんの後をついてゆく。条件付きとはいえ会わせてもらえるのはありがたい。向こうからしたら決定的な証拠になる、と思っているのかも知れないが。
「リリア嬢は今日も授業に出ようとなさったが、倒れられた。医務室で横になっている」
「…そうでしたの」
すれ違う人が皆道を譲ってくれ、軽くお辞儀までしてくれる。魔法課首席って凄いんだな、この人も有名人なんだな。
インテリメガネさんの足が止まる。ここが医務室か。
「私が良いと言うまでここから動くな。リリア嬢、ノエルだ。入っても?」
中からどうぞ、と小さく可愛らしい声が聞こえた。ノエルさんね、今度こそ覚えたぞ。
「ババリアーナ嬢、ドアの前まで来たまえ、ただし医務室には入るな。入り口の前から話しかけることを許可する」
「は、はい!」
恐る恐る入り口まで歩く。まずはミラベルさんに教わったお辞儀をしなくては。ドレスの裾を持ち、片足を引き腰を落とす。
ゆっくり顔を上げると、ベッドの上で上体だけ起こした女の子の姿が見えた。
柔らかそうな金色の髪がふわふわと波打ち、瞳は湖のように青く澄んでいる。私より背は確実に高いだろうが、線が細く華奢に見えた。
……可愛い。
文句なしに可愛い。
彼女と目が合った。その目は大きく見開かれて潤んでいるように見えた。明らかに怯えられている。
「…リリア嬢、ババリアーナです。私は貴女を酷く傷付けてしまいました、お詫び申し上げます」
こんな細くか弱そうな女の子を追い詰めてしまったことに、単純に胸が痛んだ。もうババリアーナの顔も見たくないだろうに。
「具合の悪い時に無理をいってすみませんでした、こんな事を言える立場ではございませんが、少しでも早く回復されることを祈っております。星灯祭の成功のために、私にできることがあれば何なりと仰ってくださいませ」
怖くて彼女の顔が見れなかった。私は臆病者だ、ごめんね、リリア。
「……言いたいことはそれだけか?」
「はい、全てですわ。私はこれで失礼いたします」
「待って下さい!」
リリア嬢の声が響いた。
「ババリアーナ様は間違っておりません、私が不出来なだけです」




