信じるに足る根拠は
魔法課棟に入ったのはこれが初めてだ。
リリア嬢は魔法課の超優等生かつ有名人とのことで、ここに行けばまず会えると。会わせてもらえるかはまた別の話だが。
エヴァン嬢は『この世界にリリアの好感度パラメータがあるのか、ルート分岐に影響が出るのかは分からない。無駄足になるかも知れねぇ』と言っていたけれど、人としてまず謝るのが先だろうと。
棟に踏み入れた瞬間、空気が違うのが分かった。何だろう、薬草…?薬?独特の香りがする。生徒たちが皆ローブを纏っている。あちこちで光が漏れ音が鳴る。
「これが、魔法…」
実物を見られるのかも知れないとちょっとワクワクしてしまった、そんな場合じゃないのに。
「ババリアーナ嬢…?」
生徒の一人が呟くのが聞こえた。途端に周りがざわざわと騒がしくなる。うーん有名人だなババリアーナ。
「ババリアーナ嬢、リリア嬢を探しに来たのですか?」
「ええ」
「…リリア嬢は今、体調を崩しておりまして…」
「私のせい、ですわね。今日は彼女に謝りに参りましたの。一目お会いすることは出来ますかしら」
どよめきが起こる。ババリアーナ、さてはお前『絶対に謝らないマン』だったな。この世界の貴族の振る舞いとして、正解なのかは分からないけれど、私は謝らないマンが大嫌いだ。
人混みをかき分けて一人の男性が前に現れた。美しい銀髪に縁の細い眼鏡、高身長だが少し華奢に見える。
「ババリアーナ嬢、魔法課第三学年主席のノエル・ヴァイスだ。リリア嬢に会いにきたと申したか」
「…インテリメガネ…?」
「何?」
「なな何でもないですわ!!そうです、リリア嬢に会いにきたのですわ」
攻略対象だーーー。絶対攻略対象だ。なんか煌びやかだもん。いかにも『リリアの味方』っぽいもん。そうでしょエヴァン嬢?
「リリアは精神的に参ってしまい、今伏せっていてな。原因が誰とは言わないが」
「私ですわね、今日は彼女に一言だけでも謝りたくて」
「その言葉を私が信じるに足る根拠は」
「…信じてくださいまし、としか言えませんわ」
ああ、彼の攻略方法を聞いておくんだった。好きなものや弱点、怒らせるツボ。
「根拠を提示出来ないなら無理だ」
「では、交渉いたしませんか。えー、貴方様が同席して下さいまし。リリア嬢とは一定の距離を空けますわ。私がおかしな挙動をしたらすぐに止めに入ってくださいませ」
インテリメガネさんの名前をド忘れしました。誰も何も言ってくれるな、頼む。




