↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
96/133

第八話 異世界で、まさかのメイドさん!?

「うふふ、それじゃあモカちゃん、さっそくアイちゃんと一緒に着替えてきちゃいなさい! 忙しいけど、お給料はしっかり出すからね。がんばるのよ!」


「はいっ! がんばります!」


クリスさんに元気よく見送られて、私はアイちゃんの後ろをトコトコ追いかけて更衣室に入ったの。


アイちゃんが自分のロッカーを開けて、ハンガーにかかったお洋服を私に手渡してくれたんだ。


「はい、これがモカちゃんの分の制服ね!」


それを受け取った瞬間――私は黒と白のフリフリのお洋服を、おめめを限界まで丸くして、まじまじと凝視しちゃった。

肩はぱっくりあいているし、背中も見えちゃうし、スカートはすっごく短い。どう見ても完全に日本のメイド喫茶の制服じゃーん、これ!


私が顔を真っ赤にしてあわあわしていると、アイちゃんがお洋服を優しくなでながら、少しだけ寂しそうに微笑んだの。


「私ね、日本にいた頃、喫茶店の可愛い服装にすっごく憧れがあったんだよね。もし生きていれば、高校の文化祭とかでも着てみたかったなぁ……。だからね、支配人のクリスさんにお願いして、この制服をデザインさせてもらったんだ!」


「あ…………」


アイちゃんの言葉を聞いて、私は胸の奥がキュッとなっちゃった。

そっかぁ……アイちゃんは私と同じ高校2年生の時に、事故で亡くなっちゃったんだよね。やりたかったこと、着てみたかったお洋服、いっぱいあったんだ。


――でもね、アイちゃん!

それはあなたが太陽みたいに眩しい陽キャの美少女だから似合うのであって、私は教室の端っこで小さくなっているただの陰キャ夢女子だよ!? いくらなんでも、これを着て男の人の前に出るのはハードルが高すぎるよぅ……!


やっぱり無理だよー!って涙目になりそうなお顔でアイちゃんを見つめると、アイちゃんは私の両手をきゅっと握って、きらきらした笑顔でこう言ってくれたの。


「モカちゃんもすっごく可愛いんだから、絶対に似合うよ! 一緒にこれ着て、お仕事がんばろう?」


アイちゃんの真っ直ぐな言葉が嬉しくて、私の胸の奥に、少しだけ元気が湧いてきたの。大好きな友達が一生懸命作った、憧れの詰まったお洋服。よし、私も覚悟を決めるぞー!


「う、うん……! アイちゃん、私、がんばって着てみる!」


――そうして、私がなんとかメイド服にそでを通す。すると、アイちゃんは私を丸い椅子の前に座らせて、メイク道具をパカッと開けたの。


「じゃあ、仕上げに髪の毛をきれいに整えて、お化粧もしてあげるね!」


「わ、お化粧なんて、私あんまりしたことない……」


アイちゃんは私の後ろにまわって、私の長い髪の毛をクシですーーっと優しくとき始めたの。


その時、アイちゃんが私の黒い髪の毛を見つめながら、ぽつりと寂しそうに呟いたんだ。


「私ね、転生する前は、黒い髪ってなんだか暗くて嫌だなぁって思ってたんだ。だから、ちょっとだけ髪の毛を明るく染めたりしたこともあったんだけどさ……。こうして異世界の人になっちゃうとね、日本人のツヤツヤした黒髪を見たときに、すっごく羨ましいなって思ったりするんだよ」


「アイちゃん……」


鏡の中に映るアイちゃんの綺麗な栗色の髪の毛を見ながら、私は胸の奥がぎゅーーって切なくなっちゃった。

――私の髪を優しくときながら話すアイちゃんの言葉は、私の心の中にすっごく強く印象に残ったの。


日本にいた頃は当たり前だと思ってた黒い髪の毛。でも、もう二度と戻れない世界のものだからこそ、アイちゃんにとってはかけがえのない、特別なものなんだ。


「よし! モカちゃんの綺麗な黒髪、ハーフアップにして可愛いリボンをつけちゃうね! あとはリップをちょんちょん、っておしまい!」


アイちゃんがにこにこ笑顔に戻って、私の顔に仕上げのメイクをしてくれたの。


「できた! 鏡を見てごらん、モカちゃん!」


そう言われて、私はおそるおそる目の前の大きな鏡を覗き込んでみたの。


そこには――いつもジャージを着て、教室の端っこで小さくなっていた私とは、全然ちがう女の子が映っていたんだよ。


肩と背中がぱっくりあいたフリフリのメイド服を着て、ツヤツヤの黒髪に可愛い白いリボンをつけて、お口がほんのりピンク色になった、可愛い女の子。


「う、うわぁ……これ、本当に私……?」


「ほらね! めっちゃくちゃ可愛いじゃん! クリスさんに見せたら大喜びしちゃうよ!」


アイちゃんが大はしゃぎで私の肩を揺らすのを見て、私は恥ずかしくてお顔が真っ赤になっちゃったけれど、胸の奥がぽかぽかと温かくなっていたの。よし、アイちゃんが素敵にしてくれたんだもん、恥ずかしがってちゃダメだよね!


「よし! 準備万端! フロアへいこう!」


アイちゃんに手をぎゅって引っ張られて、私はドキドキしながら、更衣室のドアを開けたの。

一歩外に出ると、そこはもう、お肉の焼けるいい匂いと、村の人たちの笑い声で熱気がムンムン! 宿泊所の食堂は、すっごく大忙しで、すでにお客さんでいーーっぱい、超満席だったんだよ!


ひぇぇ〜、やっぱりすごい人……! って私がまた気おくれしそうになった、その時だったの。私の前に立ったアイちゃんが、おっきく手をパンパンッ! って叩いたんだ。


「はーーい! みんなーー、ちょっと注目ーーーーっっ!!」


さすがは陽キャ美少女、ものすごい通る声!

アイちゃんが叫んだ瞬間、それまでワイワイ騒いでいた兵士さんや、村の男の人たちが、一斉にこっちを振り向いたの。何十人もの視線がドバッと集まって、私は心臓が口から飛び出しそうになっちゃった!


「今日からここで一緒に働くことになった、モカちゃんだよ! みんな、よろしくねーー!」


アイちゃんが私の背中をぽん! って押して、みんなの前に私を立たせたの。


その瞬間、食堂の中が――。


しーーーん……。

って、一瞬だけ静まり返ったんだよね。


(えっ……? な、なんでみんな黙っちゃうの!? やっぱり私の格好、変なのかな!?)


恥ずかしさと不安で、お顔が耳まで真っ赤になって、今すぐ逃げ出したい! って思った、次の瞬間だったよ。


「――おおおおおおおおおーーーーーーーーーっっっっ!!!!!」


地響きみたいな、ものすごい爆発的な大歓声が、食堂の中にドカーーーンって響き渡ったの!


「めちゃくちゃ可愛い子が増えたぞおおおお!」

「モカちゃんよろしくなーーーっ!」

「俺の注文、モカちゃんに取ってほしいぞおおお!」


みんながお酒のジョッキを掲げたり、テーブルを叩いたりして、すっごい笑顔で大歓迎してくれているの!「よろしくなー!」とか「頼むよー!」って、みんなのあったかい声がいっぱい降ってきて、私の胸の奥が、じわ〜〜っとすっごく嬉しくなっちゃった。


――教室の端っこで誰にも気づかれないように生きてきた私を、こんなにたくさんの人が笑顔で見て、名前を呼んでくれているんだもん!


あまりの嬉しさに、私の緊張なんてどこかへ吹き飛んじゃったよ! 私はおっきく息を吸い込んで、自分でもびっくりするくらいの大きなお声で、元気いっぱいに叫んじゃった!


「涼風モカです! 今日から一生懸命がんばりますので、みなさんよろしくお願いしますっっ!!」


私がペコッて勢いよくお辞儀をすると、またまた「うおおおー!」ってすっごい拍手が起きたんだ。横でアイちゃんも、「もー、モカちゃん最高!」ってすっごく嬉しそうに笑ってる。


胸の奥はまだドキドキして落ち着かないけれど……。

――でも、こんなに素敵な歓迎をしてもらえたんだもん、私、絶対にがんばれそう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。