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第六話 チートなのに、まさかのアルバイト!?

「じゃあさ、せっかくみんな日本人ってわかったんだし、ジャングル市場で日本のポテチとかコーラとかポチって、みんなで女子会しよー!」


私が張り切ってお財布をパカッと開けると――中にはお金が、少ししか入っていなかったの。


「あれれ……? おっかしいなぁ、まだもうちょっと残ってると思ったのに……」


あ、思い出しちゃった。さっきあぶない森の中で、ゴブリンを倒してくれたお礼に、フェルくんにハンバーグをたくさん買ったんだっけ。だから、残りのお金じゃみんなの分のポテチやジュースをたくさんポチるには、心もとないな……。


「あわわ、お金が足りないからポチれないよ〜!」


私が頭を抱えてガッカリしていると、シャルロット様がふんわりと優しく微笑んだの。


「モカちゃん、先ほど約束した通り、この世界の商売をめちゃくちゃにしないためには、日本のものを売ってお金を稼ぐわけにはいきませんわ。ですから、このエデン村でしっかり働いて、現地のお金を稼ぎましょう」


「ええっ、チートスキルがあるのに、まさかのアルバイトからスタート!?」


びっくりする私に、アイちゃんがにへっと笑って身を乗り出してきたの。


「それなら、私が働いてる『マルク商会の宿泊所』にきなよ! 一階が誰でも入れるおっきな食堂になってるんだけど、いつも忙しいから、モカちゃんも絶対に雇ってもらえるよ!」


「えっ、アイちゃん、そこで働いてるの?」


「そーだよ! この村の大農園は、エドワード辺境伯様が管理してて、働いてるのはみんな本物のプロの農民さんたちだからさ。私みたいな普通の女子高生にはちょっと敷居が高いんだよね。だから私は食堂のお手伝いをしてるの!」


シャルロット様も、それは名案ですわね、と上品に頷いたの。そういうわけで、私はさっそくアイちゃんに食堂の面接へ連れて行ってもらうことになったんだ!


「あ、でもその前に! 小川のところで待ってるフェルくんのところに行ってきてもいい?」


私は一度おうちの外に出て、小川のほとりで寝そべっているフェルくんのところに走っていったよ。


「フェルくーん! 私、これからアイちゃんの働く食堂に、アルバイトの面接に行ってくるね!」


「む……? アルバイトだと? 我を置いてどこへ行くのだ。それより、次のハンバーグはまだか」


「もう、フェルくんはハンバーグのことばっかり! これから私が働くのは、そのハンバーグを買うためのお金を稼ぐためなの! だからね……はいっ、これ!」


私はジャングル市場の画面をひらいて、今お財布に残っているお金を全部チャリンと入れたの。買えるだけのハンバーグをポチって、空から降ってきた段ボールからお皿に出してあげたんだ。


「これ、今持ってるお金で買える最後のハンバーグだからね。これをあげるから、私が面接から戻ってくるまで、ここで大人しくお留守番しててね! お願いだから暴れちゃダメだよ?」


「……ふむ。はんばーぐを置いていくのなら、大目に見よう。安心しろ、我は気高き存在。用もないのにそこらの人間を襲いたりはせん」


ハンバーグを目の前にして、フェルくんのお口からまたよだれがツーッと垂れている。本当にわかりやすすぎだよー!


でも、これでフェルくんは大人しく待っていてくれそうだから安心だね。


「よし! アイちゃん、お待たせ! マルク商会の食堂へレッツゴー!」


お留守番のフェルくんにハンバーグを置いて、私はアイちゃんの後ろを追いかけて歩き出したよ。 

シャルロット様のおうちを出て、アイちゃんと並んで村の道をトコトコ歩いていく。

歩きながら、私の胸の奥は、だんだんすっごい不安でいっぱいになってきちゃったんだよね。


「ね、ねぇ、アイちゃん……支配人さんって、やっぱり怖い人なのかなぁ……?」


「ん? 支配人のクリスさん? うーん、ちょっと見た目がすごいけど、いい人だよ」


「そ、そうなんだ……。うぅぅ、私、まじで緊張してきたよぅ……」


隣を歩くアイちゃんは、すれ違う村の人たちに「おはよー!」とか「今日も野菜おいしそうだね!」って、誰にでもきらきらした太陽みたいな笑顔で話しかけてるの。さすが陽キャだよ。まぶしすぎて目が潰れそうだよ!


それに比べて私は、地球にいた頃もコンビニとかファミレスとかでアルバイトなんて一回もしたことがなかったんだよね。お部屋の端っこでのんびり生きてきた、ただのぐうたら女子高生だったからさ。


それなのに、まさか初めてのアルバイト面接が、異世界の、しかもシャルロット様が顔パスで通っちゃうようなおっきい商会の宿泊所になるなんて、まじで敷居が高すぎて脳みそがパンクしちゃうよー!


アイちゃんはあんなに堂々としてるのに、私はもし「君、特技はなにかね?」って聞かれたらどうしようって、そればかり考えて胃が痛くなってきちゃう。まさか「ネット通販で段ボール箱を出すことです!」なんて絶対に言えないし……。


私のジャージのポケットの中で、緊張した手がじっとり汗をかいていく。

あぶない森でゴブリンに襲われた時よりも、今のほうが何倍も心臓がバクバクしてて、口から飛び出しちゃいそうだよ!


「ほらモカちゃん、見えてきたよ! あれがマルク商会の宿泊所!」


アイちゃんが指さした先には、村の建物のなかでも、ひときわ大きくて立派な木造の建物がドーンと建っていたの。


「ひぇぇ〜〜……お、おっきい……!」


私は建物の前で足がすくんじゃって、膝がガクガク震えちゃった。


でも、アイちゃんは私のそんなガタガタな気持ちなんて全然知らないで、私の手をぎゅって引っ張って、にこにこ笑顔で扉を元気よく開けたの。まさに陽キャの突撃パワーだよ!


「クリスさーん! 新しいバイトの女の子、連れてきたよー!」

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