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第二話 森をぬけたら、エデン村!

フェルくんに山盛りのハンバーグを食べさせたあと、私たちはまた進み出したよ。


「いや〜、さっきの森はゴブリンが三体も出て、まじであぶなかったねー!」


私がフェルくんのおっきな背中に乗せてもらって、もふもふの毛にぎゅって捕まりながら言うと、フェルくんはフンッてお鼻を鳴らしたの。


「フン、あんな雑魚、我にとっては羽虫のようなものだ。だが、お前が一人でウロウロするから迷い込むのだぞ。あそこは人間には危険すぎる森だからな」


「えへへ〜、フェルくんがいてくれて良かったー!」


そうなの。私が地図をよみ間違えちゃったせいで、すっごくあぶない森に入り込んじゃってたみたい。でも、世界一強いフェルくんの背中に乗っていれば、どんなあぶない場所でも、遊園地の乗り物みたいに楽ちんで安全なんだよね!


「あ、フェルくん! 前のほうが明るくなってきたよ!」


トゲトゲした木がいっぱいの暗い森をぬけると、パァァッて眩しいお日様の光が差し込んできたの。

眩しくて、私は思わず手で目を覆っちゃった。

そして、パッと視界が開けた瞬間――私はフェルくんの背中の上で、ピョーンって跳びはねそうになっちゃった!


「わあああーーーっ! すごーーいっ!!」


目の前に広がっていたのは、見渡すかぎりの大農園!

みどり色のお野菜が、ずーっと奥のほうまで綺麗に並んで植えられているの。こんなにすごい風景、この世界に来てから初めて見たなぁ!


なんでもね、この大農園を作ったのは、お隣のグランベル王国っていうところの、シャルロット様っていう公爵のお姫様なんだって!

シャルロット様は何やらワケありの理由があって、このヴァルハイト帝国の端っこにあるエデン村に住み着いちゃって、この土地の辺境伯様と手を組んで、みんなと一緒にこの大農園をゼロから作っちゃったらしいの。


「うお〜、シャルロット様、まじでかっこいいねぇ!」


悪い奴らに負けないで、みんなを引っ張っていく異世界のお姫様って感じ! 私、そういうのアニメで見たことある気がする! まさに本物のヒロインって感じで、めっちゃ憧れちゃうなぁ。

ここなら、美味しいものをいっぱい食べて、毎日お昼寝して、最高のスローライフが送れそうな予感がするよー!


そう思いながら、可愛いおうちがぽこぽこ集まっている方へ歩いていくと、一つの建物の前に私と同い年くらいの一人の女の子がぽつんと立っているのが見えたんだ。


「わあ……すっごい美少女……!」


その子は、綺麗な栗色の髪の毛に、キラキラした琥珀色のおめめをしていて、まるでお人形さんみたいに可愛いの。

私がフェルくんの背中の上で見とれていたら、その美少女ちゃんがこっちに気づいて、ぱぁァっておめめを輝かせたの。


「わっ、おっきい……! ねぇねぇ、そこの白いモフモフさんって、もしかしてあなたの相棒なの?」


「あ、う、うん……そうだよ。フェルくんって言うんだ。……えっと、怖くないの?」


おっきいフェルくんを見てビックリして泣いちゃうかも!?って思ったのに、その子は全然おびえる様子もなくて、むしろワクワクした顔でトトトッてこっちに近づいてきたんだ。


「全然! すっごくかっこよくて素敵だもん! あ、私、アイリスって言うの。あなたは?」


「私は……モカ」


「モカちゃんね! よろしく! もしかしてエデンの村は初めて?」


「うん、初めて来たの」


「そっかぁ! エデン村はあなた達を歓迎するよ! 遠くから来て疲れたでしょ?」


にこにこ、きらきら。

アイリスちゃんは太陽みたいに眩しい笑顔で、私の手をぎゅって握ってきた。


ううう、まじかぁ……。

じ、実はね、私……こういう風に一気に距離をちぢめてくる人って、すっごく苦手なんだよね……。

なんていうか、クラスの中心にいるいっちゃん目立つ陽キャの子が、教室のいっちばん端っこにいる夢女子の私に、おすそ分けのグミを配りにくる時みたいな……あの、なんとも言えない気まずい感じ!


そんな私の気持ちなんてこれっぽっちも知らないアイリスちゃんは、フェルくんの白い毛並みをじーっと見つめながら、おめめをさらにきらきら輝かせたの。


「ねぇねぇ、モカちゃん。そのおっきい彼に、ちょっとだけ触ってみてもいい?」


「えっ、あ、う、うん……」


アイリスちゃんにお願いされて、私はちょっとだけ、胸の奥がモヤモヤしちゃった。

フェルくんのもふもふは、私の特等席だもん。他の人に簡単に触らせちゃうの、なんだかちょっとヤダなぁ……っていう、ちっちゃい独占欲がむくむく湧いてきちゃったんだよね。


「フェ、フェルくんが良いって言うなら……いい、けど……」


私はそう言いながら、心の中で『フェルくんお願い! 断ってー!』ってめちゃくちゃお祈りしていたの。


すると、フェルくんはフンスとお鼻を鳴らして、アイリスちゃんをキロッとにらみつけたんだ。


「ふん、断る。我が身は気高きゆえ、人間が、気軽に触ることなど許さん!」


「わぁっ!?」


フェルくん、まじナイスーーッ!!


期待通りにキッパリ断ってくれて、私は胸の中で「よっしゃ!」ってガッツポーズをしちゃった。

フェルくんが私だけを特別扱いしてくれたみたいで、すっごく嬉しくなっちゃう!


アイリスちゃんは触れなくてガッカリするどころか、お口をぽかんと開けてびっくりしているの。


「わ、わわっ! すごい、しゃべれるんだ……! おっきい狼さんがおしゃべりしたの、初めて見たよ!」


アイリスちゃんは、さらに目を丸くしてフェルくんのことをジロジロ見つめ始めたよ。

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