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第一話 ハンバーグと、もふもふのフェルくん!

ふかーい森の中。

私――モカは、お気に入りのスニーカーで草をふみふみしながら歩いていた。


学校帰りに突然、白い世界で出会った金髪碧眼の女神様。

ノリがめちゃくちゃ軽くて、私と同じマンガが好きだったんだよね。好きなキャラクターの話を始めたら二人で大盛り上がりしちゃって、すぐに友達みたいに仲良くなっちゃったんだよ。そんな女神様から、もらったチートスキルを手に、この異世界に来てから、もう2日ほど経つんだ。


「うーん、お腹すいたなぁ。今日のご飯は何にしよう……」


そんなことをのんびり考えていた、その時だったよ。

ガサガサッて草が大きく揺れて、みどり色で怖い魔物が三体、目の前に飛び出してきたの!


「ギギッ!」

「あ、ゴブリンだ……!」


木の棒を持った魔物たちが、私を威嚇しながら襲いかかろうとしてくる。

普通なら大ピンチのはず。でもね、私の心臓はちっともバクバクしていなかったよ。私はおっきく息を吸い込んで、森の奥に向かって叫んだの。


「フェルくん、助けてー!」


そしたら次の瞬間、すっごい風がびゅーーんって吹き抜けたんだ!


「――グルルァッ!」


地面が揺れるくらいおっきな声と一緒に現れたのは、真っ白で超巨大なオオカミの姿。聖獣フェンリルの、私の大好きな相棒『フェルくん』だよ!


フェルくんは鋭い爪をピカッと一閃させて、あっという間に三体のゴブリンをふっとばしちゃった。さすがは聖獣、めちゃくちゃ強いや!


フェルくんのカッコいい姿を見ていたら、私、この世界に落っこちてきてすぐのときのこと、思い出しちゃった。あの時も、怖い魔物に囲まれて泣きそうだった私を、フェルくんがびゅーーんって助けてくれたんだよね。


「ふん……。我が目を離した隙に、不甲斐ない」


ゴブリンを片付けたフェルくんは、フンスってお鼻を鳴らして、偉そうに胸を張るんだ。プライドが高いから、いつもこうしてカッコつけてるんだよね。でも――。


「フェルくんかっこいいー! ありがとうー! もふもふ〜〜っ!」


私が我慢できずにフェルくんのおっきな体にダイブして、綺麗な白い毛並みに顔をうずめると、フェルくんは「うぐっ」って声を漏らしながらも、じっと耐えてくれている。


えへへ、フェルくんのもふもふ、やっぱり最高。ずーっとすりすりしていたいなぁ。


「……おい、いつまで抱きついている。それより約束はどうした」


あ、そうだった! 助けてくれたら、美味しいものをあげるって約束してたんだっけ。


私はフェルくんの体からぴょんと離れて、胸の前で手をぽんと合わせたよ。


「おっけー! じゃあね、フェルくん、ちょっと待っててね!」


私は心の中で『ジャングル市場、ひらけごまー!』って念じたの。


すると、目の前の空中に、ピカピカ光るおっきなスマホみたいな画面がぽわんと浮かび上がったんだ。画面の上には、見慣れた黄色い矢印のマーク。女神様が大サービスでくれた、世界一便利なチートスキルだよ!

これ、地球で有名なお買い物サイトの「ジャングル」と繋がっていて、なんでも注文できちゃうんだよね。


「えーっと、フェルくんへのお礼だから……やっぱりお肉だよね!」


画面の検索窓をぽちぽち叩いて、『ハンバーグ レトルト 高級』って入力する。


画面を下にすーーっと動かしていくと、すごく美味しそうなデミグラスソースがかかったハンバーグの写真が出てきたの。


「これにしよーっと! ぽちっ!」


購入ボタンを押すと、画面の横にちっちゃいトレイが飛び出してきたよ。私はお財布からお金をチャリンと入れる。女神様のよくわからない神パワーのおかげで、ジャングル市場が勝手にお金を計算して決済してくれるんだ。便利すぎるー!


「いくよー、さん、に、いち……それっ!」


空から、お馴染みのデザインの段ボール箱がポフッと降ってきた。草の上に落ちた箱のテープをペリペリ剥がして、中から金色のパウチをたくさん取り出すよ。


「フェルくん、ひとつじゃ足りないよね? じゃあ、もっといっぱい開けちゃうね!」


携帯コンロを使ってパウチをアツアツに温めてから、お皿の上にてんこ盛りに出していったんだ。

あつあつのハンバーグが山盛りになって、茶色いソースの海ができる。 ふわぁぁぁ……!

お肉のいい匂いが、森の中にいっぱいに広がる。


「フェルくん、お待たせー! じゃじゃーん、特製ハンバーグだよ!」


お皿を地面に置くと、フェルくんがゆっくり目を開けたよ。

彼はフンってお鼻を鳴らして、わざと興味なさそうな顔でハンバーグを見下ろすんだ。でもね――。


「じゅるり……」


ん? 今、なんかすごい音が聞こえたような。

フェルくんの顔をじーっと見てみると、キリッとしたカッコいいお口の端から、透明なよだれが一本、ツーッと垂れていたの。


「じゅるるるる……ポタポタポタ……」


わわっ! よだれがダラダラ止まらなくなってる!

フェルくんは「私は別に食べたくなどないが?」みたいな澄ました顔をしてるのに、お口からは滝みたいによだれが流れて、足元の草が水たまりになっちゃってるよ!


「フェルくん、よだれすごーい! わかりやすすぎだよー!」


フェルくんは待ってましたとばかりに、お皿にがばっと頭を近づけたんだ。


「ぱくりっ……もぐもぐ……ッ! ふぉおおう……っ!」


おっきな口でハンバーグを頬張ったフェルくんの体が、嬉しそうにびくううっ! と震えた。

一緒に旅を始めてから何度か食べているはずなのに、やっぱりこの味が大好きみたい。


「美味い、美味い! やっぱり『はんばーぐ』は最高だぞ! むしゃむしゃ、もぐもぐ!」


「ふふっ、フェルくんってば、何回食べてもすっごい食いしん坊さんだなぁ」


私がクスッて笑うと、フェルくんは最後のお皿までピカピカになめまわしてから、ふんっとお鼻を鳴らしたよ。お口のまわりがソースで茶色くなっているし、よだれもまだポタポタ垂れてるから、全然カッコよくないんだけどね。


「ふん、何を言うか。我が毎日お前を護衛してやっているのだ。これくらいの美味しいご飯をもらうのは、当然の権利だからな!」

「いつも守ってくれてありがとね、フェルくん」


私は笑いながら、またフェルくんの白い毛並みにぎゅーっと抱きついたの。

美味しいご飯と、最高のもふもふ。私たちの異世界スローライフの旅は、今日もとっても平和だよ!

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