第五話 特製ジャパイモ料理、お披露目です!
「シャルロット様、村長さんたちを連れてきました!」
マルクさんが息を切らせて戻ってきたわ。後ろには、日に焼けた優しそうな村長さんと、それに『鉄壁の四重奏』の男の子4人も興味津々でついてきているわね。
「シャルロット様、お料理するんですか!?」と目を輝かせたリリィちゃんもいます。
「皆さんお揃いで。さあ、いまから美味しいものを皆さんに食べてもらいます」
私はいつものおばあちゃんスマイルを浮かべながら、さっそく交易所の調理場を借りて腕をまくったわ。
今日作るのは二品。前世の日本で家族に大好評だった、シンプルだけど素材の味を最大限に引き出すお芋料理よ。
まず一品目は『ふかしイモ・塩ハーブ』。
よく洗ったジャパイモを、交易所の大鍋でじっくりと蒸かし上げるの。
「お芋はね、弱火でゆっくり熱を通すと、中のでんぷんが甘みに変わってとっても美味しくなるのよ」
しばらくすると、調理場いっぱいに、お芋特有のほくほくとした甘い香りが立ち込め始めたわ。
「うわぁ、何これ……! ただのジャパイモなのに、すごくいい匂いがする!」
リリィちゃんが早くも喉を鳴らしているわね。
中まで火が通ったら、お芋を木皿に盛り付けて、軽く手で割って十文字の切れ込みを入れるの。そこに、この村の特産品候補だったハーブを刻んで、お塩と一緒にパラパラと振りかければ完成よ!
そして二品目は、若者が絶対に大好きな『ポテトチップス』。
ジャパイモを限界まで薄くスライスして、冷水にさらして余分なデンプンを落とすの。それを、大鍋に熱した油でキツネ色になるまでカリッと揚げ焼きにするのよ。
黄金色に揚がったお芋に、お塩をパパッと振って大きなボウルの中で小気味よく跳ねさせる。
シャカシャカ、パリパリ。耳に心地よい音が響くわ。
「さあ、皆さん出来上がりましたよ。温かいうちに召し上がれ」
「じゃ、じゃあ失礼して……」
まず村長さんが、恐る恐るふかしたてのジャパイモを口に運んだわ。
一口齧った瞬間、村長さんの目がこぼれ落ちそうなくらい丸くなったの!
「な、なんだこれは……! 柔らかくて、口の中でホロホロととろける! それに、この噛むほどに溢れる濃厚な甘みは一体何だ!? これが本当に、あの家畜の餌同然だったジャパイモなのか!?」
「本当だ! 美味すぎる! このカリカリしたやつ、手が止まらないぞ!」
「塩と油だけなのに、なんでこんなに美味いんだ!?」
『鉄壁の四重奏』の男の子たちも、凄まじい勢いでポテトチップスを口に放り込んでいるわ。
リリィちゃんにいたっては、「シャルロット様! これ、手が止まりません! とっても美味しいですことー!」って、私の口癖を真似しながら頬張ってくれているじゃないの。うふふ、可愛い。
「ふふ、お茶をお淹れしましたから、こちらも一緒にどうぞ」
私はマルクさんから譲り受けたあの緑茶を、絶妙な温度で淹れて皆さんに差し出したわ。
お芋の塩気と甘みの後に、温かい緑茶の爽やかな渋みが口の中をさっぱりと洗い流す。
この無限ループに、マルクさんはガタガタと震えながらお皿と湯呑みを凝視していたわ。
「……素晴らしい。シャルロット様、これは『一皿100ウェン』どころか、王都の食堂や茶屋に持ち込めば、何倍もの値で売れますよ! 手間もかからず大量に獲れるジャパイモが、これほどの絶品料理になるなんて……! これこそ、この村を救う、最高の特産品です!」
「お任せするわ、マルクさん。皆さんが、お腹いっぱい美味しいものを食べて笑顔になってくれれば、私はそれだけで満足ですから」
私がニコニコとお茶を啜っていると、交易所の外からバタバタと激しい馬の足音が近づいてくるのが聞こえたわ。
扉が勢いよく開き、入ってきたのは、これまた額に尋常じゃない汗をかいた商隊の早馬の伝令だったの。
「マ、マルク会長! ローゼンバーグ公爵領からの緊急返信です!」
その書状を受け取ったマルクさんの顔から、一瞬で血の気が引いていくのが分かったわ――。
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