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第三十一話 おばあちゃんちの朝ごはん(第三部 完)

「おばあちゃん、おかわり!」


「はいはい、今装ってあげますからねぇ」


アイちゃんが、空っぽになったお茶碗を両手で差し出して、とーっても嬉しそうな笑顔を向けてくれたわ。

夕べは大粒の涙を流して大泣きしていた子が、一晩ぐっすり眠って温かい朝ごはんを食べただけで、もうこんなに満面の笑顔を見せてくれる。

本当に、やっぱり子供はこうじゃなくっちゃねぇ。前世でも、朝から子や孫たちが元気にお代わりしてくれるのが、何よりの生き甲斐だったもの。


「まぁ、アイちゃん、本当に気持ちのいい食べっぷりですこと。お味噌汁もまだお鍋にたくさんありますからね」


私が微笑みながら温かいお味噌汁とお豆腐を器に注ぎ足してあげると、アイちゃんは「おばあちゃんのお味噌汁、本当に世界一美味しい!」なんて、寝癖をぴょこぴょこと跳ねさせながらハグハグと幸せそうに頬張っているわ。朝の食事を楽しんでいる姿を見ているだけで、おばあちゃん、胸がいっぱいになっちゃう。


そうやって二人で縁側の近くの居間で、温かい朝の時間をのんびりと楽しんでいるとね。


「おはようございます! シャルロット様、今日も一日よろしくお願いします!」


お庭の方から、いつものように無遠慮で、でも男の人らしくてとっても元気な声ががやがやと響いてきたわ。

見れば、朝の爽やかなお日様の下で、我が家の護衛という名の畑仕事をしに、ギルくんとお供のたくましい騎士様たちが、クワやスコップを片手に集まってきてくれたみたい。毎日毎日、泥だらけの顔をして本当によく働く人たちですこと。


「まぁ、ギルバート様、皆様、おはようございます。今朝も早いのですわねぇ」


私が縁側の戸を開けていつもの笑顔でご挨拶をすると、元気よく顔を見せてくれたギルくんたちが、お庭の真ん中でピタッと動きを止めたの。

そのまま全員揃って、私のすぐ後ろで口の周りにお味噌をちょっとつけたまま、きょとんとしているアイちゃんの方を見て、借りてきた猫みたいに完全に固まっちゃっているじゃないの。


(あらあら、まあまあ。ギルくんたちったら、とってもショックを受けているみたい?)


優秀な騎士様たちが護衛しているはずなのに、見慣れない女の子がいることに朝になるまでちっとも気がつかなかったんですもの。護衛としてのプライドが傷ついて、手足をぶるぶるさせているのかもしれないわねぇ。


そんな私の勘違いを余所に、ギルくんは限界まで目を丸くして、泥だらけのクワを握りしめながら、手足をガタガタと激しく震えさせ始めたの。大げさねぇ。


「し、シャルロット様……!そ、そちらの、お味噌汁を飲んでいらっしゃるお方は、一体……? み、見覚えがないのですが……っ!まさか、そのお方こそが、夕べの……あの夜の闇から現れてすべてを刈り取る、最強の……殺戮の天使、あるいはその手先……っ!?」


「まぁ、ギルバート様。朝からそんな物騒なことを仰らないでくださいな。この子は、そうねぇ……遠い親戚のようなものですわ。今日からこの子もここに住みますから、皆様仲良くして差し上げてね。お友達になってあげるのですよ。いじめたりしては、絶対に駄目ですからね」


私が人差し指を振りながら優しく諭すと、ギルくんはお味噌汁のお椀を抱えたアイちゃんと私を、交互に見つめながら「え、ええっ……!?」と、ますます混乱した顔で硬直してしまったわ。


「ねぇ、おばあちゃん。この、泥だらけのキリッとした人たち……?」


お茶碗を持ったアイちゃんが、不思議そうに寝癖をぴょこぴょこと跳ねさせながら、私の袖を引いて尋ねてきたの。


「アイちゃん、この人たちはねぇ、こちらの国のとっても優秀な騎士様たちで、今は我が家の……いえ、この村の警備をお手伝いしてくださっているのよ」


私が説明してあげると、アイちゃんは「へぇー、おばあちゃんの騎士様なんだ。ごくろうさまです!」と、にこにこしながらお味噌汁をズズッと啜ったわ。


だけどね、その一連の微笑ましいやり取りを見つめていたギルくんは、もう完全にキャパシティを超えてしまったらしく、持っていたクワをガタッと地面に落として唖然と立ち尽くしたかと思ったら、眉間にこれでもかと深いシワを寄せて、お庭の真ん中で「おばあちゃん……オバアチャン……?」と、壊れたおもちゃのようにぶつぶつと呟き始めちゃったじゃないの。深刻な顔で頭を抱えながら、あちこち視線を泳がせてガタガタと激しく震え戦慄いているわ。


後ろに控えるモブ騎士様たちも「一体どういうことなんだ……!」と顔を見合わせて一緒にガタガタ震えているじゃないの。


「あらあら、ギルバート様?そんなに震えて、やっぱり夜の警備でお疲れなのかしら」


私は湯呑みを片手に、のんびりと首を傾げたわ。


(第三部 完)

第三部をお読みいただきありがとうございました!


続く第四部は、まるごと(全編)アイリス視点でお届けします。

ゲームのバッドエンドを恐れ、本心ではないのにシャルロットを追い詰めてしまった元女子高生のアイリス。

罪悪感に震える彼女が、おばあちゃんの包容力や美味しいご飯、そして温かい村人たちや護衛騎士ギルバートとの交流を通して救われていく。

もちろん、我らがシャルばあも毎回バッチリ登場します!


あっと、その前にいつものお兄様回ですね。閑話を一話挟んで第四部です!


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