第十二話 揚げたてフライドポテトの誘惑ですわ!
「さあ、お待たせいたしましたわ。トントンカンカンとたくさん働いた後は、これを食べてしっかり体力をつけてくださいな」
私が調理場から大きなお皿を抱えて戻ってくると、木陰で休んでいた男の子たちの鼻が、一斉にピクピクと動き出したわ。
今日作ったのはね、前世の日本で孫たちがそれこそ奪い合うようにして食べていたおやつの定番、『フライドポテト』よ!
さっきのポテトチップス風の薄切りとは違って、今回はジャパイモを贅沢に拍子木切り(太めのスティック状)にしたの。お芋を揚げる時はね、最初は低温でじっくり中まで火を通して、最後に温度を上げてカラッと仕上げるのが、外はカリカリ、中はホクホクにする裏ワザなのよ。
仕上げに、交易所のお塩とハーブをパパパッと振って、大きなボウルの中で豪快に躍らせれば完成。黄金色に輝くお芋から、たまらない香ばしい湯気が立ち上っているわ。
「うおおお! 何だこれ、棒状のジャパイモが揚げてあるのか!?」
「……美味そう」
「ほらほら、遠慮しないで熱いうちに食べてください」
私が勧めると、まずは大食漢のガイルくんが、太い指でフライドポテトをガシッと掴んで口に放り込んだわ。
カリッ、ホクォ……。
静かな木陰に、信じられないほど小気味いい咀嚼音が響き渡ったの。その瞬間、いつも無口なガイルくんの目がこれ以上ないほど見開かれて、
「……美味い」
地響きのような一言を漏らすや否や、もの凄い勢いで次のお芋へと手を伸ばし始めたじゃないの!
「あ、ずるいぞガイル! 僕ちゃんにも一口……(サクッ)……う、うわあああ! なんだこれ! 外側がカリッカリなのに、中はジャパイモの甘みが信じられないくらいホックホクに詰まってる! 手が、手が止まらないよー!」
カインくんが3人分くらいの声量で大騒ぎしながら、お芋を両手に持って交互に口へ放り込んでいるわ。
「本当だ、美味すぎる……! 塩気とお芋の甘みのバランスが絶妙で、いくらでも食べられちゃうぞ!」
リーダーのロイくんも、普段の苦労性を忘れて無邪気な笑顔でお芋を頬張っているわね。まぁ、泥だらけの顔をして美味しそうに食べて、本当に可愛い男の子たちだこと。おばあちゃん、作った甲斐があったというものよ。
「シャルロット様、これ、本当に悪魔的な美味しさです!食べる手が、自分の意志と関係なく動いちゃいますー!」
「……うん。ただお芋を切って揚げただけのはずなのに、この完璧な食感の対比は計算され尽くしている。一種の精神魔法でもかかっているのかな……」
リリィちゃんがハグハグとお芋を口に詰め込む横で、ハンスくんがまた湯呑みを片手に、一歩引いた目で大真面目に恐ろしい考察をしていたわ。
「あらあら。ただの揚げ物のコツですのよ」って、私はいつものお上品な笑顔で煙に巻いておいたけれどね。
「ふふ、お口が油っぽくなったら、この温かいお茶を飲みなさいな」
私が差し出した緑茶を、男の子たちはズズッと啜る。
「ハァ〜……生き返る……」
「……ん。お茶とお芋、無限にいける」
カリカリのお芋を食べて、温かい緑茶で口の中をすっきりさせて、またお芋に手を伸ばす……。この完璧な「無限ループ」に、4人の男の子たちとリリィちゃんの胃袋は、完全に私の手の中に収まってしまったわね。
「シャルロット様! 俺、この家が完成しても、ずっとここに残って村の警備を続けたいです!」
「僕ちゃんも! シャルロットちゃん……あ痛っ、シャルロット様の専属の護衛になりたーい!です!」
カインくんがロイくんに頭を小突かれながらも、目を輝かせてそんな嬉しいことを言ってくれるじゃないの。
「うふふ、若いわねぇ。でもね、皆さんはマルクさんと一緒に王都へ帰ってお仕事をしなければならないでしょう? それまでは、ここでたくさん美味しいものを食べさせてあげますからね」
私は縁側になる予定の土台に腰掛けて、夏休みに遊びに来た孫たちを見守るおばあちゃんの目で、優しく微笑んだわ。
お兄様にお丸投げした王都の陰謀のことは、ほんのちょっと気になるけれど、この子たちが美味そうにおやつを食べている姿を見ているだけで、私の心はとーっても穏やかで満たされるわ。
さて、お腹がいっぱいになったら、午後もみんなで仲良くトントンカンカン、我が家作りを頑張りましょうかねぇ!




