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拾う男  作者: すずめ屋文庫


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第21話

「はい、では、今度の三者懇談では、現時点での皆さんの進路希望を聞きます。お家の人とよく話をしておくこと。いいですねー!」


「えー、全然考えてねー。」


「私は専門かなぁ。」


「マジか。親とまさにその事で、ケンカ中だよ…。」


 様々な声が教室に沸き起こった。



「明里、明里。」


 ひそひそ声で、後ろの席のジュンが話しかけてきた。


「何?ジュン。」


 振り返り、応える。


「どう?進路、決まった?」


「あー、うーん、まだ……考え中かな。」


「そっか……。んー、私の勘違いかな。最近の明里、ちょっと今までと、雰囲気が違う気がしたからさ、もしかして、どこかいい所が見つかったのかなって思って。」


「そう?自分では、あまり変わってる感じはなかったけど……。どうなんだろ……。」



 再び前を向き、持っているシャープペンシルを指でクルクルと回す。



 目は、進路希望用紙を向いて、頭は中学時代にタイムスリップする。



 中学の廊下で、ユカが自分を呼びとめる。


「何?」


「ねぇ、明里は、どこの高校に行くの?」


「え?桜ヶ丘高校希望だけど。」


「マジかぁ……。同じじゃん。ちなみに国際科?普通科?」


 あの時、とっさに、「嘘」の希望である方の普通科と答えた……。


 なんとなく、ユカが嫌そうだったから。


 ユカだったら、国際科を選ぶ気がして……。


 ユカに、自分の本当の気持ちを教えたくなくて、私は嘘をついた。



 すると、



「あ~、良かった!私、国際科希望なんだよね!」


 ユカは答えた。



(やっぱり……。)



 私は、もう本音を言えなくなっていた。



(あの時、私が「国際科希望」と言っていたら、ユカはどんな反応をしていたのだろう……。)


 きっとあの時より、もっと悪い空気になったに違いない。


 

 マシな空気は手に入った。



 だけど?



 失ったものは?



 自分の気持ちは?



 本当は?



 思考が段々とクリアになっていく……。



 シンプルに、「英語」が好きだったという事実。



 でも、国際科という、専門的な学科に入った所で、果たして、皆についていけるのか、と尻込みしていた、私。



 興味はあった。


 だけど、一歩が踏み出せなかった。



 振り払えなかった。


 ユカを。



 怖かった。


 本音のある方向に行くことが。



 もし、失敗したら?


 自分で選んで決めた事で、嫌な事が起こったら?


 どうしたらいい?


 

(……いつまでそうするの?)

 


 もう一人の自分が叫ぶ。



(好きな事、やらない人生で良いの?)



(挑戦すら、しないの?)



(選べるのに!!!)



(あの人は、行動してるのに!!!)



(周りなんか気にせずっ!!!)



(毎日!)



(毎日!!)



(あんなに、あの人から勇気をもらっているのに!!!)



 心臓がバクバク言っている。


 でも、嫌な気分ではない。



 明里は顔を上げ、再び後ろを向き、ジュンに向き合った。



「私、なんか、わかったかも。」



 ジュンは一瞬目を大きく開き、そして、にっこりと笑った。

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