森の徘徊屋ゴロノンとの戦い
その巨大な顔は俺たちを発見するとゴロゴロと転がりながら俺たちの方へ向かってきた。
「森の徘徊屋ゴロノンですね」
そう言ったのはタロスだった。
「かなり怖い顔なんだけど、危険とかないのか?」
「ゴロノンは硬い石でできていて、鉄壁の守りが売りの魔物ですよ。でも見た目と違って怖くないですよ。守りに絶対の自信があるせいか近寄ってきますが、こちらから攻撃をしなければ襲ってはきません」
「タロスは博識だよな。色々なことを知っていて助かるよ」
「いえいえ、自分が森で生き残るためには必要な知識を集めただけです。それでも、途中から力を求めてよくわからないキャラになっていましたが」
最初会ったときはだいぶ若い時にありがちな妄想で暴走をしていたが、今はうちのパーティーの中でもかなりの常識人になっている。
「タロスはさすがだな」
「本当! タロスさんさすがですー」
ヒナもタロスを褒めている。
タロスもまんざらではないのが口角があがって顔がにこやかだ。
「ゴロノンが何かを襲うのを見たことはありませんので、放置してシルバーラビットを探しましょう。沢山捕まえてシルバーラビット牧場を作りましょ」
タロスはそういってゴロノンを無視して歩き出す。
俺もヒナを抱っこしてタロスの後ろに続くと、ゴロノンが俺の方へ転がってきた。
「このゴロノンさん何かいいたいみたいです」
ヒナがゴロノンの方を向いて不思議そうな顔をする。
ヒナには何か特別な力がありそうだからな。きっと感受性が豊なのだろう。
「何かって?」
「うーん」
ヒナがゴロノンの方へ身体を突き出し、ゴロノンを観察する。
するとゴロノンが大きな口をあけて、いきなりヒナを食べようとしてきた。
俺は急いでヒナを引っ張り身体をひねる。
「あぶねぇ! タロス! なにが人を襲わないだよ! 今ヒナを食べようとしたじゃねぇか!」
「えっ? あっ! ダンさん危ない!」
「おっとっとと」
ゴロノンはヒナを狙ってもう一度大きく口をあけて追いかけてきた。
俺はヒナをしっかりと抱きかかえて、木を蹴りながら木の上に登って少し距離をとる。
鉄鋼木の上のだと、振動は伝わってくるが折れる心配はないので安全だったりする。
タロスが斧を振り回し、ゴロノンを弾き飛ばしてくれる。
だが、かなりの勢いで当たったタロスの斧ですらゴロノンには傷一つつけることはできなかった。
ゴロノンはそのまま転がり様子をうかがっている。
「ダンさん、ヒナちゃん大丈夫ですか?」
「ダンさん! 弱いんですから無茶しないでくださいよ」
ジャミルとモッくんもゴロノンへと対治してくれる。
モッくんはやっぱり俺単体では弱いと思っているらしい。
事実だけど。
最強の硬さを持っているゴロノン相手にタロスの斧でも傷一つつけることができないならやることは一つだ。
「ポチッ!!」
俺は速攻でポチを呼ぶ。助けをわざわざ待ってみたいなことはない。
無理はしない。安全第一だ。
「ワォーン!」
森の奥からポチの鳴き声が聞こえる。
これでポチならすぐにきてくれる。
「ポチが来るまで持ちこたえてくれて。そうすれば、あとは何とかなる」
「わかりました」
タロスが斧を持ってゴロノンの前で構えていると、ゴロノンは目の前で同じ場所でゴロゴロと転がり始めた。様子を見ているのか?
最初ゆっくりだったゴロノンは同じ場所を何度も転がりだし、段々とスピードがあがっていく。
ゴロノンの身体が徐々に赤くなっていき、身体からモクモクと赤い煙がたちのぼっていく。
「タロスなにかまずいぞ!」
遠くの森の中から何かが転がってくる音がする。
これは……。
「やばい! 仲間を呼びやがった」
終焉の森へ来て順調に仲間も増え、ポチがいたことで少し油断をしていたところもあった。
だが、この森は魔物が強くて今まで誰も開墾のできなかった場所なのだ。
急いで木から飛び降りる。
仲間が集まってくる前に逃げなければ。
「ダン、待たせたな」
ポチは一瞬で状況を理解したのかゴロノンに高速で体当たりをくらわせ、遠くへ弾き飛ばす。
ゴロノンの身体から煙がでるのがおさまり石がはじけ飛ぶ。
さすがポチだ。
「なかなか硬い魔物みたいだな。どうする? 一端逃げるか? 本気でやれば倒せないこともなさそうだけど……」
「さっき、身体から赤い煙がでて仲間を呼んだみたいだからな。長期戦になると不利だ。今も転がってきている音が聞こえるだろ?」
森の奥で何かが転がっている音と鉄鋼木に接触しているのか、硬いもの同士が当たっている音が聞こえてくる。
「あぁたしかに。だいぶ近くまできているな。じゃあこいつだけ戦闘不能にして、戦闘から離脱するぞ」
ポチがゴロノンに爪に魔力を込めて襲いかかかる。
ゴロノンの硬い皮膚が裂かれ、岩が崩れ落ちるがゴロノンは痛みを感じていないのかまったく気にしている様子はなかった。
普段は大人しい魔物だというが、なかなか手ごわい。
「ねぇーパパー戦わないとダメ?」
ヒナはゴロノンが可哀そうなのか戦うことに躊躇しているようだった。
たしかに戦わないですむにこしたことはないが、でも、生きていくためには自分の身を守る大切さも教えておく必要がある。
優しいだけでは生きていきないのだ。
「どうしたヒナ? ヒナは戦いたくないのかな? でもね、さっきヒナ食べられそうになっただろ? 食べられちゃうと死んじゃうんだよ。だから辛くても自分が生き残るためには戦うのも必要なんだよ」
「うん。でも……なんか違うの。ゴロノンからはヒナと同じ魔力を感じるの」
「……どういうこと?」
「うーん。うまく言えないの」
ヒナの言葉が正しいなら、ゴロノンは森の守り神?的な感じの可能性もある。
ヒナも森に呼ばれてと言っていた。
何か共鳴するようなものがあるのだろうか。
でも……現段階でヒナをゴロノンに食べさせるという選択肢はない。
そんな危険にさらすくらいなら俺が守って逃げ回った方がいい。
ヒナの感覚も大切にしてあげたいが、それよりもヒナの安全が第一なのだから。
俺にできるのは……。
「ポチ、ゴロノンをできるだけ殺さないでくれ。ヒナの仲間の可能性があるみたいなんだ」
「わかった。別にこいつら硬いだけで美味しくなさそうだもんな」
ポチはゴロノンの身体を削り上手く回転できないようにしていく。
理由はどうあれ攻撃しないでくれるのは助かる。
「ポチさん! 離れて!」
モッくんの声にポチが反応し後方へと大きく飛びのく。
その瞬間地面が大きく陥没し、ゴロノンが落とし穴の中へ落ちて行った。
「これでしばらく時間が稼げますよ」
垂直に掘られた穴はゴロノンがあがるには、なかなか難しそうだ。
「すごいな。これモッくん一人でやったのか?」
「土魔法のエキスパートですからこれくらいは。でも、ほとんどの魔物はこれのぼってくるんでやっても怒らすことくらいしかできないんですけどね」
モッくんはスコップに寄りかかりながら俺にウィンクしてきた。
戦闘になって最初からずっと姿が見えないと思っていたが、モッくんは落とし穴を地面の下で掘っていたらしい。
モッくんの魔法すごすぎるだろ。
「よし、いったん俺たちの街へ戻ろう」
俺がそう言って振り向くとそこには、大きなゴロノンが大きな口をあけて俺を飲み込もうとしていた。
そこから、スローで映像が流れていく。
俺は強くヒナを抱きかかえながら反転逃げようとする。
ポチが俺の方へかけより、タロスが斧を振り上げる。
モッくんは驚いて尻もちをついていた。
ジャミルは……いなかったな。あとでしばいてやろう。
俺は……後方から現れた別のゴロノンにヒナと一緒に一飲みにされた。




