第十回 ルル・イファン人民共和国の誕生編 (第二十三章~第二十四章)
※本ページには、『異世界艦隊日誌』第二十三章から第二十四章までの内容および結末に関するネタバレが含まれています。
●揺らぎ始めたポルメシアン商業連盟●
国際自由貿易協定機構「IFTA」の設立によって、世界の貿易構造は大きく変わり始めていた。
それまでポルメシアン商業連盟は、植民地から安価に物資を集め、それを各国へ高値で売ることで莫大な利益を得ていた。しかし、フソウ連合を中心とする新たな交易網の形成と、食料価格を利用した投機の失敗により、連盟の商人たちは深刻な損失を被る。
特に、食料不足が長期化すると予測して大量の食料を買い占めていた商人たちは、IFTAによる食料供給が始まったことで在庫を抱え込むことになった。
ポランド・リットーミンは、こうした事態を早くから予測していた。
彼は危険性の高い植民地の支店を整理し、人材と資金をアルンカス王国、ウェセックス王国、フラレシア共和国、合衆国などへ移していたため、他の商人ほど大きな損害を受けずに済んだ。
連盟内部では旧来の商業体制に固執する者と、新しい世界情勢に適応しようとする者の差が明確になっていく。
老商人アントハトナ・ランセルバーグは、連盟を立て直すためには従来の価値観に縛られない指導者が必要だと考え、ポランドをその候補として意識し始める。
●ショウメリア公国との新たな交易●
ポランドは、フソウ連合の商業上の仲介者としてショウメリア公国を訪れる。
ショウメリア公国はソルシャーム社会主義共和国連邦との戦争を続けており、艦艇だけでなく、それらを維持・修理するための工作機械や工業設備を必要としていた。
公国を率いるノンナ・エザヴェータ・ショウメリアは、完成した兵器を購入するだけでは、自国の軍事力を長期的に維持できないことを理解していた。
そのため彼女は、駆逐艦などの購入に加え、ビスマルク級戦艦を修理できるほどの性能を持つ工作機械や、国内工業を発展させるための設備の輸入を希望する。
この交渉は、フソウ連合の技術が単なる軍事支援ではなく、各国の産業構造そのものを変え始めていることを示すものだった。
一方、ポランドにとっても、商業連盟の外側に独自の交易網を築く重要な一歩となる。
●皇帝アデリナに託された遺産●
シルーア帝国では、アデリナが皇帝として国政に向き合っていた。
かつては感情的になりやすく、周囲に不満をぶつけることも多かったアデリナだったが、帝国の窮状と自らの責任から逃げることはできなかった。
彼女は、皇帝という地位の重さを理解し始め、帝国を存続させる方法を模索するようになっていた。
そのころ、帝国の元宰相グリゴリー・エフィモヴィチ・ラチスールプ公爵が亡くなる。
グリゴリーは、かつて帝国を陰から支配していた人物でもあったが、帝国の行く末をまったく考えていなかったわけではなかった。
彼の執事ヤロスラーフ・ベントン・ランハンドーフは、グリゴリーが密かに残していた遺産の存在をアデリナへ伝える。
ランカーナ灯台の地下には秘密港が建設されており、そこには財宝や資源だけでなく、グローサー・クルフュルスト、ケーニヒ、マルクグラーフをはじめとする戦力が隠されていた。
この遺産は、衰退した帝国に再起の可能性を与えるものだった。
しかし、それをどのように使用するかは、もはやグリゴリーではなく、皇帝として成長しつつあるアデリナ自身が決めなければならなかった。
●国民を消耗品に変える総動員●
ソルシャーム社会主義共和国連邦では、ショウメリア公国との戦争が思うように進まず、最高指導者イヴァン・ラッドント・クラーキンの苛立ちが強まっていた。
イヴァンは、兵士が不足しているなら国民をさらに動員すればよいと考え、国家総動員法を発動する。
十分な訓練を受けていない市民が粗末な装備を与えられ、そのまま前線へ送り込まれていった。
さらに、逃亡や後退を防ぐため、「戦術支援特務戦闘部隊」、通称「特戦隊」が兵士たちの後方に配置される。
特戦隊の任務は前線部隊を支援することではなく、命令に従わず退却しようとする自軍兵士を射殺することだった。
これにより、連邦軍の兵士は敵だけでなく、味方からも銃を向けられる状態となる。
プリチャフルニアは、訓練されていない国民を大量に投入しても戦力にはならず、国家の将来を支える人材を失うだけだと警告する。しかし、イヴァンはその意見を受け入れなかった。
ショウメリア公国のノンナやビルスキーも、連邦が自国民を資源のように浪費する方針に強い嫌悪と危機感を抱く。
連邦に対するプリチャフルニアの失望は決定的なものとなり、彼女は密かに新たな道を探り始める。
●ルル・イファン九月革命●
IFTAによる食料供給が始まったことで、ウェセックス王国やフラレシア共和国の植民地では、食料不足による混乱が徐々に落ち着き始めていた。
しかし、ポルメシアン商業連盟の植民地ルル・イファンでは、状況が改善しなかった。
現地では十分な収穫があっても、利益を優先する商人や植民地政府によって食料が買い占められ、住民のもとへ届かなかった。
長年にわたる搾取への怒りと、飢餓への不満が限界を超え、九月二十二日、各地で一斉に反乱が発生する。
当初は局地的な暴動と思われていたが、植民地政府に反発していた住民や現地兵が次々と参加し、反乱は「ルル・イファン九月革命」へと拡大していく。
その中心にいたのが、アーチャことアヴドーチヤ・フョードロウィチ・ラスコーリニコフ、トバイ、そして連盟軍のクローランス・レンカバッラ大佐だった。
レンカバッラはルル・イファン出身であり、現地住民を弾圧するのではなく、彼らと協力する道を選ぶ。
彼は反乱軍と戦っているように見せかけながら、守備隊を無用な戦闘から遠ざけ、最終的に港湾都市を住民側へ引き渡した。
九月二十五日までに、ポルメシアン商業連盟の植民地政府はルル・イファンから追放される。
●傭兵から国を守る軍人へ●
革命を陰から支えていたのが、傭兵団「飢えた狼達の巣」を率いるパットラ・ファンスーバルだった。
「飢えた狼達の巣」は五十年近い歴史を持ち、契約を守ることで知られる傭兵団だった。
しかし、ポルメシアン商業連盟は、雇った傭兵を使い捨ての戦力として扱っていた。
パットラは、報酬を支払えば命まで自由にできるという連盟側の姿勢に反発し、早い段階からレンカバッラと連絡を取っていた。
革命の際には、傭兵団が植民地政府を守っているように見せながら、実際には関係者の退避や守備隊の降伏を助ける。
革命成功後、パットラはルル・イファンを離れず、軍事顧問として新国家の防衛に協力することを決める。
●植民地支配を揺るがす革命●
ルル・イファンでの革命は、ほかの植民地にも大きな影響を与えた。
特に、重い献金を強いられ、土着の信仰を否定されていた教国の植民地では、住民の反発が一気に強まる。
教国は騎士団を派遣して反乱を鎮圧しようとするが、力による支配は住民の不満をさらに深めていく。
ポルメシアン商業連盟も、ルル・イファンを失えばほかの植民地が次々と独立しかねないと判断し、懲罰艦隊の派遣を決定する。
ルル・イファンの革命は、もはや一つの植民地内の出来事ではなかった。
世界中の植民地に対し、「支配国へ抵抗し、独立することが可能かもしれない」という現実的な選択肢を示したのである。
●フソウ連合とサネホーンの接触●
世界各地で植民地支配が揺らぐ一方、フソウ連合は海賊国家サネホーンとの正式な接触を試みていた。
交渉の場所にはムバナル諸島が選ばれ、フソウ連合からは青島大尉が乗る駆逐艦島風、サネホーンからはリンダ・エンターブラを中心とする使節団が派遣される。
フソウ連合は、サネホーンを単なる海賊集団として扱うのではなく、国家として交渉する意思を示した。
ただし、過去に海賊行為を行ってきたサネホーンを無条件で信用したわけではなく、正式な国交を結ぶための条件を提示する。
リンダはその内容を持ち帰り、サネホーンを率いるグラーフ・ツェッペリンへ報告する。
提示された条件は簡単なものではなかったが、サネホーンが海賊集団から国家へ変わるためには避けて通れないものでもあった。
両国の交渉は、敵対か服従ではなく、互いの立場を認めたうえで関係を築く第一歩となる。
●教国の裏側で動く者たち●
教国の内部では、「老師」と呼ばれる人物と、その側近らしき「卿」が暗躍していた。
彼らは、世界的な食料不足を利用して教国の影響力を拡大しようとしていたが、IFTAの設立によって計画を妨げられていた。
さらに、フソウ連合とサネホーンの関係改善も、彼らにとって望ましいものではなかった。
老師たちは、両国の交渉を妨害するため、すでに何らかの仕掛けを行っていることを示唆する。
ただし、この時点では具体的な計画、組織の全容、「老師」や「卿」の正式な立場は明らかになっていない。
これらは今後へ引き継がれる要確認事項となる。
●ルル・イファン人民共和国の建国●
ポルメシアン商業連盟を追放したルル・イファンの人々は、十月初旬、独立国家の樹立を宣言する。
新しい国の名は、「ルル・イファン人民共和国」と定められた。
代表にはアーチャが就任し、トバイ、レンカバッラ、パットラらが新国家を支えることになる。
しかし、独立を宣言するだけで国家が完成するわけではない。
国民を守る軍隊、外国と交渉する外交機関、物資を輸入する交易路、行政を動かす人材、そして他国からの承認が必要だった。
世界各国の反応も冷淡だった。
ルル・イファンが連盟の攻撃を防ぎ、国家として存続できるかどうかは、まだ誰にも分からなかったからである。
アーチャたちは、革命を成功させた指導者から、国家を維持する責任者へ立場を変えることになる。
●リプと秘密の手紙●
建国直後のルル・イファンへ、リプことリプニツキー・ロマノヴァ・リプニツカヤが到着した。
彼には、エヴゲニーヤ・セミョーノヴィチ・リターデン少尉が同行していた。
リプはアーチャにとって古くからの友人であり、互いに強い信頼で結ばれていた。
彼が持ち帰ったのは、単なる再会の知らせではなかった。
ソルシャーム社会主義共和国連邦のプリチャフルニアから託された秘密の手紙があった。
連邦の独裁化と国民の大量動員を目の当たりにしたプリチャフルニアは、もはや現在の体制を支え続けることはできないと判断し、連邦から距離を置く意向を示していた。
それを受け、新たなる手段として使者をフソウ連合やアルンカス王国に送る必要がある。
ルル・イファンの独立は、連邦内部の反対勢力が外の世界と接触するための新たな経路にもなり始めていた。
●商業連盟第九艦隊の来襲●
ポルメシアン商業連盟は、ルル・イファンの独立を認めず、第九艦隊を中心とする懲罰部隊を派遣する。
司令官はラストノナラ・ケンカシア。
大商会ケンカシア家の三男である彼は、自らの家柄と地位に強い自信を持ち、現地住民や部下の意見を軽視する人物だった。
十月十日、第九艦隊はルル・イファン沖へ到着する。
艦隊は輸送船二十四隻を含む四十六隻で構成され、約五千六百人の上陸部隊を伴っていた。
ケンカシアは新国家の軍事力を侮り、艦砲射撃によって抵抗を排除したのち、一気に上陸して革命政府を倒そうとする。
●パットラの防衛戦●
ルル・イファンには、第九艦隊と正面から戦えるだけの海軍力はなかった。
パットラは、戦力差を埋めるため、土地を知る側の優位を最大限に利用する。
偽の砲台や意図的に流した情報によって敵の判断を誘導し、上陸地点をヒルカフントム海岸へ限定する。
さらに、艦砲射撃を受ける陣地には必要以上の兵士を置かず、本当の火力を敵から見えない位置へ配置した。
ルル・イファン海軍を率いるリッランパ・ペタンドラン大尉も、敵の主力艦と撃ち合うことを避け、輸送船や支援艦艇を狙う。
上陸部隊の先頭には、リー・カントンハ率いる傭兵団「死にぞこないの虎」が配置されていた。
連盟側は傭兵を損害の多い最前線へ投入したが、ルル・イファン側の待ち伏せによって上陸部隊は大きな損害を受ける。
短時間で勝利できると考えていた第九艦隊は、初日から作戦の立て直しを迫られた。
●嵐が決めた勝敗●
翌十月十一日、天候は急速に悪化していた。
経験のある部下たちは艦隊を安全な海域へ移動させるよう進言するが、ケンカシアは撤退を拒否する。
彼は、ここで引き返せば自らの評価と家名に傷がつくことを恐れ、攻撃の継続を命じた。
一方、パットラは天候の変化を予測し、海岸付近の住民と守備隊を早い段階で避難させていた。
連盟艦隊の砲撃は、すでに放棄された陣地や偽装された施設に集中する。
その後、海域を異常な規模の暴風雨が襲った。
損傷していた補給艦や輸送船が次々と転覆し、重心が高い新型艦艇も激しい波に耐えられなかった。
退避の判断が遅れた第九艦隊は壊滅的な被害を受け、司令部も崩壊する。
ルル・イファンは、艦隊戦で敵を打ち破ったのではない。
敵の性格、地形、天候、情報を利用し、自らの被害を抑えながら相手の失策を待つことで独立を守ったのである。
●敵ではなく、次の協力者として●
艦隊から切り離された「死にぞこないの虎」を含む約六百人の傭兵は、十月十四日に降伏する。
ルル・イファン側は、彼らを植民地支配の主犯とはみなさず、通常の捕虜よりも寛大に扱った。
団長リー・カントンハは、パットラの古い知人でもあった。
パットラは、リーたちを責めるのではなく、連盟に使い捨てられた傭兵として迎え入れる。
さらに、リーが商人タイドラ・マックスタリアンと関係を持っていることを確認し、ルル・イファンと外の世界を結ぶ新たな連絡経路として活用しようとする。
戦場で敵だった者を排除するのではなく、国家存続のための人脈へ変える。
それは、兵力も資金も少ないルル・イファンだからこそ必要とされる、現実的な国家運営だった。
●フラレシア共和国の秘密支援●
ルル・イファンの建国とリプの秘密任務を知ったフラレシア共和国のアリシア・エマーソンは、表立って軍事介入することを避けながら、密かに支援する方法を選ぶ。
任務を託されたのは、かつて密輸を行っていたトール・リミットハータと、その妻ミランダだった。
二人には、高速貨物船「雑草号」が与えられる。
任務は、ポルメシアン商業連盟の海上封鎖を突破してルル・イファンへ入り、リプとエヴゲニーヤを国外へ運び出すことだった。
雑草号は夜間と迷彩を利用して哨戒線を抜けようとするが、途中で発見され、連盟艦艇の追跡を受ける。
それでもトールたちは速度、煙幕、海域の地形を利用して追跡をかわし、ルル・イファンのファンカリル港へ到達する。
●トールとアーチャの再会●
ファンカリル港でトールを待っていたのは、ルル・イファン代表となったアーチャだった。
アーチャはトールの妹と結婚しており、トールにとって義弟に当たる人物でもあった。
しかし、二人の間には過去の出来事によるわだかまりが残っていた。
再会したトールは、アーチャに対する怒りを隠さず、感情をぶつける。
それでも、国家存亡の危機とリプの任務を前に、二人は過去だけにとらわれることをやめる。
アーチャは新国家の代表として、トールは雑草号の船長として、それぞれが背負っている責任を理解し、協力する道を選ぶ。
個人的な再会と和解は、ルル・イファンとフラレシア共和国を結ぶ非公式な人間関係にもなっていく。
●雑草号の脱出作戦●
雑草号には、リプ、エヴゲニーヤ、商人パウエル・リルシンタ、そして「死にぞこないの虎」から選ばれた護衛四人が乗り込む。
ルル・イファン側も、国家が保有するわずかな艦艇を出撃させ、雑草号の脱出を支援する。
この航海は単なる人員輸送ではなかった。
ルル・イファンの存在を国際社会へ伝えるための、国家の将来を左右する任務だった。
雑草号の副長と新入り船員ナーバン・アンバーナは、小型艇や煙幕を使って追撃艦を別方向へ誘導する。
ナーバンは共和国から送り込まれた監視役だったが、雑草号の一員として危険な役目を引き受ける。
リガンハット諸島では、リネット・パンドグラ少佐率いる連盟艦艇が待ち伏せしていた。
トールたちは島々の位置、煙幕、敵の思い込みを利用し、進路を反転させる大胆な機動によって追撃艦を突破する。
雑草号は予定より早く共和国のモンタナシンス港へ帰還し、リプたちは休む間もなくアルンカス王国へ向けて移動する。
●雑草号という家族●
任務を成功させた褒賞として、フラレシア共和国は雑草号の所有権をトールたちへ譲渡する。
さらに、共和国の支援を受けて「リミットハータ海運商会」が設立されることになった。
共和国は資金や施設を提供する代わりに、必要な際には商会へ協力を求める。
ミランダは、無条件で共和国の命令に従うことを避けるため、危険すぎる依頼を拒否できる権利を確保する。
アリシアの支援は、純粋な善意だけによるものではなかった。
共和国は雑草号との関係を維持し、必要なときに正規軍では行えない任務を依頼できる経路を作ろうとしていた。
また、アリシアはルル・イファンを、共和国自身が抱える植民地政策を考え直すための重要な事例として見ていた。
ナーバンが共和国の監視役であることも、トールや副長にはすでに知られていた。
それでもトールは、ナーバンを船から追い出そうとはしなかった。
共に命を懸けた以上、彼はすでに雑草号の船員であり、家族だった。
共和国もナーバンが船員と監視役を兼ねることを認める。
かつて密輸船に乗っていた者たちは、船と商会、そして帰る場所を手に入れたのである。
●この編で起こった変化●
ルル・イファンでは、植民地支配への反乱が革命へ発展し、独立国家「ルル・イファン人民共和国」が誕生した。
アーチャたちは、支配者を追放する革命家から、軍事、外交、交易、行政を担う国家指導者へ変わった。
パットラは、契約によって戦う傭兵から、自ら選んだ国を守り、軍を育てる軍事顧問となった。
レンカバッラは商業連盟の軍人という立場を捨て、故郷の独立を支える軍人となった。
リプはプリチャフルニアの意思を外の世界へ運ぶ使者となり、ルル・イファンは連邦内部の反対勢力と国際社会を結ぶ中継点となった。
フラレシア共和国は、ルル・イファンを正式に支援する前に、雑草号を使った非公式な協力を開始した。
トールたちは、国家に利用されるだけの密輸業者から、自分たちの船と商会を持つ存在へ変わった。
一方、ポルメシアン商業連盟では、旧来の植民地経営と商業体制の限界が明らかになった。
連盟がルル・イファンを武力で取り戻せなかった事実は、ほかの植民地にも独立の可能性を示すことになる。
●次の物語へ●
ルル・イファン人民共和国は、最初の独立戦争を生き延びた。
しかし、国際的な承認、安定した交易、正式な軍隊、行政機構など、国家として解決すべき問題は数多く残されている。
リプが運ぶプリチャフルニアの手紙は、ソルシャーム社会主義共和国連邦の内部崩壊につながる可能性を持っていた。
フソウ連合とフラレシア共和国は、ルル・イファンとプリチャフルニアから示された意思に、どのように応えるかを迫られる。
また、ポルメシアン商業連盟の弱体化は、植民地独立運動をさらに拡大させることになる。
教国の老師たちが仕掛けた策、フソウ連合とサネホーンの交渉、アデリナが受け継いだ帝国の秘密戦力も、まだ表舞台には現れていない。
ルル・イファンの建国は、一つの小国が生まれたというだけの出来事ではなかった。
それは、これまで大国や商業勢力によって支配されてきた人々が、自ら国と未来を選び始める時代の始まりだった。




